若葉竜也は作品ごとのポジショニングが的確 『街の上で』『あの頃。』で2021年も映画界を席巻!?
若葉竜也という存在については、かねてより非常に素晴らしい俳優だと思っていた。この2020年は、これまで以上に映画界における彼の重要性を多くの方が思い知らされた年になったのではないだろうか。『野ブタ。をプロデュース』(2005年/日本テレビ系)が再放送されたこともあり、テレビモニターの向こう側にいる15才当時の若葉少年から現在の彼への“飛躍”ぶりも確認することができた。
『葛城事件』(2016年)や、2017年公開の『美しい星』、『南瓜とマヨネーズ』、2018年の『素敵なダイナマイトスキャンダル』、『パンク侍、斬られて候』などなど、若葉は良質な作品の数々で、出番の多寡にかかわらず“イイ仕事”をしてきた。ある種、“主役級”の人物を演じたのは『葛城事件』くらいのものだが、いずれの作品でも彼のポジショニングは的確で、ときに繊細に、またときに大胆に、各作品に彩りを添えてきたように思う。
そんな若葉のキャリアの積み重ねが大きく実を結んだのが、『愛がなんだ』(2019年)だった。本作で彼が演じたナカハラという人物は、一途な片想いをし続けるヒロイン(岸井ゆきの)の“鏡”にあたるような存在。ナカハラは、自身の想い人である葉子(深川麻衣)にとって都合のいい男だと自覚しながらも、彼女に尽くしてしまう人物であった。彼のことを少しばかり胸を痛めながら見ていたものの、恋愛のかたちはひとそれぞれ。しかし、演じる若葉のひたむきさに、どうか幸せであって欲しいと手を組み願ったものである。筆者のような気持ちになった方は多いと聞く。若葉が本作のサイドストーリーを充実させ、ロングランヒットに貢献したのだ。
さて、この2020年でいえば、『ワンダーウォール 劇場版』や『罪の声』で若葉が演じたキャラクターたちが、出番の多寡にかかわらず“イイ仕事”をした。前者は現代における若者たちの衝突を描いた作品であり、若葉は衝突し合う者たちとはまた異なる価値観を持つ青年をドレッドヘアー姿で飄々と演じ、ある種の“多様性”を作品にもたらす役割を担っていたと思う。後者の『罪の声』は、大御所俳優たちも集った超大作。若葉は若くして長いキャリアを持つものの、本作においては“若手”の部類に入り、そのうえ非常に出番が少なかった。しかしその短い出演時間のなかでも、彼の狂気じみた佇まいは深く脳裏に刻まれ、本作が成功へと繋がる重要なピースになっていたと思う。ニヤつき顔のドレッド男と、怒りで振り切れる青年ーーこのギャップは大きく、脇にいながらも印象に残ったのだ。