赤楚衛二×町田啓太の“もどかしさ”は現実世界そのもの 『チェリまほ』が描く人を好きになること

赤楚衛二×町田啓太の“もどかしさ”は現実世界そのもの 『チェリまほ』が描く人を好きになること

「相手の心が読めたらいいのに」

 誰かを好きになると、誰しもそんなことを思ったことが一度はあるのではないだろうか。自分の頭の中身をそのままパカッと開けて相手に見せることができたら、こんな苦労はしないのに。いや、それは少し困るか。

 今期ドラマ最大の話題作、木ドラ25『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京ほか)、通称『チェリまほ』は、赤楚衛二演じる、タイトル通り童貞のまま30歳を迎えたことにより、「触れた人の心が読める魔法」を手に入れた主人公・安達清の物語だ。「純粋BL」として累計発行部数100万部を突破した同名コミック(ガンガンpixivで連載中)が、吉田恵里香脚本、風間太樹監督により見事に実写化された。ポーカーフェイスの裏に安達への切なくなるほど熱すぎる恋心を秘めた、仕事のできるイケメン同期、町田啓太演じる黒沢優一と安達とのピュアな恋物語であると同時に、もう一人の魔法使い、安達の親友の柘植将人(浅香航大)と、彼が恋する一見チャラそうな宅配業者・綿矢湊(ゆうたろう)との恋物語も見逃せない展開になっている。

 このドラマの面白いところは、我々の生きている現実と極めて地続きなファンタジーであることだ。まず、Omoinotake「産声」が流れるオープニングがとにかくいい。黒沢と安達、それぞれの朝が描かれているのであるが、黒沢がカーテンを開け、眩しい朝の光が差し込んで安達が目を覚まし、黒沢が水をコップに注ぎ、安達がコップの水を飲む。2人の行動が絶妙に繋がっているのに、2人は寒色、暖色にくっきりと分かれたそれぞれの部屋にいる。そしてそれぞれに手を空に伸ばし、何かを掴もうとする。この触れそうで触れない、2つの世界のもどかしさが、我々の現実ではないだろうか。

 SNSという、思ったことをそのまま世界に発信することのできる手段が生まれ、それを介した出会いや繋がりも生まれる世界になったにも関わらず、道行く人の心の声が聞こえるようになってしまった初回の安達が溢れ出る悪意の声に怯えるように、我々は日々SNSの匿名ゆえの心ない悪意に怯え、黒沢や藤崎(佐藤玲)のように、周りが求める自分に必死で自分を合わせようとしたり、安達のように、自己肯定感を持てずに自分を過度に卑下したり、誰もが孤独と向き合って生きている。

 さらにはコロナ禍において、初回の安達同様に、お釣りをもらう時も電子マネー、あるいはトレーを介し、極力人と触れ合うことを避けなければならなくなってしまったソーシャルディスタンスの世の中において、このドラマで描かれる「誰かに触れることで、今まで知らなかったその心に触れ、一生懸命寄り添おうとする」ことは、より得難く貴重なものになってしまった。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる