『恋する母たち』3つの修羅場を駆け抜けるスリリングな展開 不倫ドラマの怖いもの見たさな面白さ

『恋する母たち』3つの修羅場を駆け抜ける

 ついにやってきてしまった、修羅場のときが……。金曜ドラマ『恋する母たち』(TBS系)は、3つの恋が加速していく。それは同時に、修羅場への道を一気に駆け抜ける行為でもあった。

息子に軽蔑された杏

 杏(木村佳乃)は自分の夫の不倫相手の夫だった斉木(小泉孝太郎)と、想いを通わせることに。複雑な状況から繋がった縁だったが、今は離婚をして2人とも独身。堂々と恋人同士として付き合うことを決心する。この11年、研の母として淡々と役目を果たしてきた杏だったが、久しぶりに愛される喜びに触れたことで、まるで恋する少女のように周囲が見えない状態になっていく。大事な息子・研(藤原大祐)にも自分の恋人を知っていてもらいたい。そんなエゴから、斉木を紹介したいとまで言い出すほど。

 しかし研にとっては、失踪していたとはいえ両親の離婚が成立したのはほんの数日前。母の恋人を受け入れるには、少々混乱してしまう。だが、「母親だってメスだ」と大人びた発言をする友人たちに触発され、努めて冷静に斉木と対面してみせる。研も理解を示してくれたと、ますますうれしくなる杏。しかし、ドラマというのはそんなポジティブな気分のときに、ひたひたと影が忍び寄るものだ。

 斉木の元妻・由美(瀧内公美)が突然やって来て、今も斉木と頻繁にコミュニケーションを取っているようなことをほのめかし心を乱していく。さらに、斉木との関係が11年前から続いていたのではと詰め寄られた会話を研が聞いてしまう。最愛の研から「キモいよ」と罵られてしまうなんて、杏にとっては最悪の修羅場だ。

ついに丸太郎に落ちたまり

 一方、先週すでに夫の繁樹(玉置玲央)と愛人・のり子(森田望智)との3者面談という修羅場をくぐり抜けたまり(仲里依紗)は、温泉旅館に来ていた。恋愛上級者の丸太郎(阿部サダヲ)の助言通り、しおらしい妻であり3人の子どもたちの母を演じきった。そんなまりにグッときた繁樹は、手の平を返したように夫婦水入らずの温泉旅行にまりを誘ったのだ。

 ところが、まりの心はちっとも晴れない。自分の気分次第で、あれほど夢中になっていた愛人をいとも簡単に捨ててみせる繁樹にますます引いてしまったのだ。その上、繁樹のスマホにのり子が自殺を図ったという知らせが届く。しかも、まんまとのり子の元へと向かうという繁樹。自分を頼ってくれる弱っている女に弱い男は、何度だってこの手の策略に引っかかるし、つまりは浮気をやめられない。なぜなら母は家庭を守るために強くならざるを得ないものだから。

 温泉宿にひとり残されたまりは思わず丸太郎に電話をかける。「楽しんで」といつもどおり快活に話す丸太郎に、本当は来てくれたらいいのにと思いながら、そっと電話を切る。そのモヤモヤを流すように温泉に入っていると、隣の部屋から聞き覚えのある声が! もちろんその声の主は丸太郎だった。相手に「会いたい」と言わせず、ちゃんと会いに来てくれる人は魅力的だ。愛されたいという気持ちを紐解いていくと、その主成分は「察してほしい」だったりする。いつも夫や子どもの要望を察して動いてきたまりにとってはなおさらだ。これまで一手一手慎重に進めてきた丸太郎は、ついにまりの最後の一線を超えさせる。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる