現代に形を変えて蘇る岡崎京子作品 『ジオラマボーイ・パノラマガール』の不思議な時間

現代に形を変えて蘇る岡崎京子作品 『ジオラマボーイ・パノラマガール』の不思議な時間

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、フジロック2017で観たオザケンのライブが忘れられない大和田が、『ジオラマボーイ・パノラマガール』をプッシュします。

『ジオラマボーイ・パノラマガール』

「平坦で平凡な私は、スクラップ&ビルドのトーキョーに置いてきぼりを喰ったような気分」

 東京に住む16歳の高校生・渋谷ハルコ(山田杏奈)は、ある夜、橋の上で倒れていた神奈川ケンイチ(鈴木仁)にひとめぼれする。“世紀の恋”だとはしゃぐハルコに対して、真面目でおとなしげなケンイチは、受験目前、衝動的に学校を辞めてしまいそれどころではない。さらに、勢いでナンパした危険な香りのする女の子・マユミ(森田望智)に夢中になっていく。二人の平行線の恋はどこへ行くのか。友達や家族や自分、悩みもがく少年少女の刹那的な視線を切り取った、恋と成長の物語だ。

 私は岡崎京子作品をこれまで読んだことがなく、オザケン(小沢健二)との関わりや、映画の見出しに「岡崎京子原作!」とあるだけで、謎のサブカルセンサーが働いて、年上のカルチャー好き界隈の人たちの反応から、面白いに違いないというイメージだけで作品を観てきた。また、オザケンが手がけた映画『リバーズ・エッジ』の主題歌「アルペジオ」を『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で満島ひかりが歌ったとき、Twitterで話題になった「90年代渋谷系恋愛相関図」を見たりして、当時の岡崎京子に対する熱を後追いで知り、“キャッチー”や“斬新”という表現とはまた違う、登場人物たちが放つ特別なセリフの数々で、青春に陰影を与えた人なんだろうなと想像する。

 岡崎京子原作の映画はこれまでに、蜷川実花監督作『ヘルタースケルター』(2003年出版/2012年映画化)、行定勲監督作『リバーズ・エッジ』(1993年出版/2018年映画化)、そして二宮健監督作『チワワちゃん』(1996年出版/2019年映画化)が公開されている。そして『ジオラマボーイ・パノラマガール』は1989年出版から約30年を経て、2020年の現代に映画化される。

 近年映画化が相次いでいるのはなぜだろう。行定監督は『リバーズ・エッジ』の原作漫画が出版された1994年当時のことを「その頃は助監督をやっていて、僕の先輩の監督たちがこぞって映画化したいって言っていたんですよ。『リバーズ・エッジ』はかなり影響を与えていたし、もっと言うと今の時代に活躍しているクリエイターたちに影響を与えていると言っても過言ではないですね」(引用:「リバーズ・エッジ」行定勲監督 単独インタビュー/日本映画祭 | JAMS.TV オーストラリア生活情報ウェブサイト)と語っている。また、二宮監督は、20代で出会った『チワワちゃん』について「うまくいかなくてつまずいていたときに、『チワワちゃん』で描かれていた“青春の爆発と終わり”や“何かを乗り越えようとあがく若者たちの姿”が印象的で、自分のやりたいテーマはここにつまっていると思いました」(引用:門脇麦×二宮健 いまの20代が考える、岡崎京子カルチャーについて – コラム : CINRA.NET)と27歳で本作の映画を完成させた。描いている情景や流行は異なっていても、その作品に内在するテーマやメッセージが不変的に心に響くものであるからこそ、いつの時代でも形を変えて、私たちに届けられるのかもしれない。

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