森七菜の表情と演技を堪能できる! 『恋あた』は“本物”であることを証明する主演ドラマに

森七菜、『恋あた』で本物であることを証明?

 現代パートでは利発的で明るく朗らかな少女に徹し、古民家の縁側を飛び回るように走る。広瀬が演じる鮎美の影を帯びた雰囲気をより顕著にさせながら、明るい方へ明るい方へとどんどん引き込んでいく力がスクリーンの中を縦横無尽に巡っていく。そして回想パートでは、こちらも広瀬が演じている姉の未咲に想いを寄せる神木隆之介演じる鏡史郎に、淡い恋心を抱く複雑な心情を控えめな動きとともに体現。広瀬や神木といった、とにかく上手くて存在感のある共演者相手に一寸の引けも取らない、それどころか“食う”ほどのスクリーンスティーラーぶりを発揮しただけでなく、極め付きには主題歌という大役をも務める。新海作品につづいて岩井作品でもその作家性の強い世界観との親和性を見せつけ、改めてその“特別さ”を感じさせたわけだ。

 さて、そんな森がこの“恋あた”で演じるのは、無気力なコンビニアルバイトの井上樹木役。アイドルグループをクビになり、コンビニスイーツを食べてSNSで感想を投稿していたところで、中村倫也演じるコンビニチェーンの社長と出会い、スイーツ開発を手掛けることになるのだ。本物のアイドルグループukkaに混ざっても遜色のないオーラを放つアイドル時代の回想シーンに、さまざまなスイーツを美味しそうに頬張る姿。そしてなんといっても、先日放送された『あのコの夢を見たんです。』(テレビ東京系)でも見事なコンビネーションを見せた仲野太賀と一緒にシュークリームの開発に熱心になる姿。どのシーンにおいても、期待通りの森の表情と演技を堪能できるドラマになっていることが第1話からうかがえる。

 今後もV6の井ノ原快彦となにわ男子の道枝駿佑が親子役を演じる『461個のおべんとう』や、SixTONESの松村北斗とダブル主演を務め、ギャルメイクにも挑戦した『ライアー×ライアー』と出演作が続いている森。『3年A組』で頭角を現し、『エール』でその名が全国区に知れ渡ったところで迎える“恋あた”が、彼女を“本物”であると証明する作品になることだろう。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
『この恋あたためますか』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:森七菜、中村倫也、仲野太賀、石橋静河、飯塚悟志(東京03)、古川琴音、佐藤貴史、長村航希、中田クルミ、佐野ひなこ、利重剛、市川実日子、山本耕史
脚本:神森万里江、青塚美穂
プロデュース:中井芳彦
演出:岡本伸吾、坪井敏雄
主題歌:SEKAI NO OWARI「silent」(ユニバーサルミュージック)
製作著作:TBS
(c)TBS

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