『この恋あたためますか』は充電期間に寄り添う暖かいドラマに 今こそ欲していた甘い時間の安心感

『恋あた』充電期間に寄り添う暖かいドラマに

 大勢で集まることも、遠くへ遊びに行くことも、まだまだパーッとできない2020年秋。「今年はいろんなことがありました。 甘いものは、人を幸せにします。」のキャッチコピー通り、そんな鬱屈とした日々を過ごす視聴者に、甘い幸せを届けてくれる新ドラマが始まった。

 火曜ドラマ『この恋あたためますか』(TBS系)は、コンビニのスイーツ開発をきっかけに、恋が生まれるラブストーリー。神森万里江(『相棒season18 元日スペシャル』)、青塚美穂(映画『伊藤くん A to E』)によるオリジナル脚本作品だ。

 アイドルで人を幸せにするという夢に破れ、コンビニでアルバイトをする主人公・井上樹木を演じるのは森七菜。うまくいかない人生にふてくされ気味で無気力な言動を繰り広げながらも、ふとしたときに見せる透明感のある眼差しから繊細な心が震えているのを感じさせる。そんなフレッシュでピュアな演技でグイグイと視聴者の心を引き込んでいく。

 そして、樹木の勤務先であるコンビニチェーン『ココエブリィ』の社長・浅羽拓実を演じるのは中村倫也だ。浅羽は周囲から反感を買ってでも、目的を果たすために強硬手段に出る超合理主義者。しかし強気な態度とは裏腹に、スイーツが嫌いになる悲しい過去もありそうで……。何を考えているか全く読めないサイコキャラと、寂しそうで放っておけない子犬感を両立させてしまう、これぞ中村倫也に適役といえるキャラクターだ。

 “イケメン社長(しかも中村倫也)が、どん底にいるヒロインにチャンスをくれる”というシチュエーションを聞くだけでもう「絶対おいしいやつ!」と叫ばずにはいられないあらすじ。王道と言えば王道だが、むしろそれがいいのだ。いつものコンビニにあるスイーツと同じように、火曜10時になれば甘い時間が待っている。その安心感を今こそ欲していたのだと思わせてくれる第1話となった。

 印象的だったのは、樹木と浅羽の中に鬱積しているもの。アイドルとして芽が出なかった樹木は、スタッフから“味のしなくなったガム”だと例えられ、グループから卒業を余儀なくされる。頑張ったのに誰にも選ばれなかったという挫折から「自分なんか頑張っても……」と自己肯定感を低下させる思考スイッチが強烈に根付いてしまった。夢を追いかけ続けることもできず、かといって次に目指すべき姿も見い出せない。そんな自分は、蛇口のセンサーにも感知されないほど存在感の薄い人間なのだとガッカリする日々を過ごしていた。

 一方、浅羽もまた外資系ネット通販会社『エクサゾン』の本社から、グループ傘下に入った『ココエブリィ』の社長を急に任されるという、不可抗力に翻弄されている1人だ。優秀だからこそ脅威に感じた者による体の良い左遷にあった……そんな噂話が囁かれ、悔しい思いをひとり噛み殺す。早期に結果を出して本社に返り咲こうとするも、『ココエブリィ』メンバーからの協力が得られない。ついには退職届を提出するという波乱の展開に。



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