The Wisely Brothers 真舘晴子の『眠る虫』評 洞窟をくぐり抜ける繊細な気持ち

写真集『Seabird』の写真(by真舘晴子)

 監督の質感の使い方が好きだ。ティッシュペーパーと水、砂っぽいもの、電気、違和感、石、ビニール、紙、勢いのある風のもつ怖さと強さ。すこし前に購入した、Bobby Dohertyの『Seabird』という写真集を思い出させた。あるものを、あるものとして見させないというか。それは、ものの見方そのものである。知らないものの見方を知ることは楽しい。ふと出てくる電子機器やインターネットは、田舎町だと、未来の話のように感じる。パリ近くに住んでいる、アンティークの家具が多い友人の家の真ん中に、ドーンとiMacが置いてあったのを見て、良い違和感を感じたのと似た気持ちだ。一体、ここはいつの時代だろう?と考える。

 都市の未来と、田舎町の未来は、どう違うのだろう。組み合わせの話。それらに合わせたAnd Summer Club Tokiyoさんの音楽は、音と動きの組み合わせが心地よい違和感を生む。日本の風景に重なるこの音たちは、すこしづつ違和感の秘密をといていく気がする。誰かの指のリズムで生まれるメロディ、光でシンセサイザーを押しているような音や、小学校の体育館の照明をガシャッと点けたような、まばたきのリムショット。

 相変わらずバスの中には、いろんな人がいる。誰かとの再会を夢見るひと、自分の唇にリップを塗ることに真剣なひと、友人の悩みを聞いて一緒に考えるひと、街の景色に新たなお気に入りを見つけるひと。

 小さい頃に失くしたものを、もう一度思い出してみる。私たちは、自分だけに見えて他の誰にも見えない虫に、声をかけることができるのかも?

■真舘晴子
The Wisely BrothersのGt/Voを担当。
都内高校の軽音楽部にて結成。オルタナティブかつナチュラルなサウンドを基調とし会話をするようにライブをするスリーピースバンド。
2014年下北沢を中心に活動開始。 2018年2月キャリア初となる1st full album『YAK』発売。
2019年7月17日に2nd Full Album『Captain Sad』をリリース。
公式サイト:http://wiselybrothers.com/
公式Instagram:https://www.instagram.com/wiselybrothers/

■公開情報
『眠る虫』
ポレポレ東中野で公開中
出演:松浦りょう、五頭岳夫、水木薫、佐藤結良、松㟢翔平、高橋佳子、渡辺紘文
監督・脚本・編集:金子由里奈
音楽:Tokiyo(And Summer Club)主題歌「なめたらしょっぱいのか」
企画:直井卓俊
プロデューサー:藤田直哉
特別協力:小原治
製作・配給:yurinakaneko
2019/カラー/5.1ch/スタンダードサイズ/62分
公式サイト:https://www.filmnemuru.site/

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