西田尚美、筒井道隆、段田安則らが従来のイメージと異なる役に 『半沢直樹』のキャスティングの妙

『半沢直樹』イメージ覆すキャスティングの妙

 この他に、白井の秘書・笠松茂樹役で出演する児嶋一哉(アンジャッシュ)など、半沢と対決する相手側に、その俳優のパブリックイメージと落差のある配役が多い。あえて真逆のイメージを演じさせることで、そのキャラクターの印象を強調する効果があると考えられる。また、ギャップの大きい役を演じることができるのは、俳優としての実力の証明でもある。

 明確な対立構図を持つ『半沢直樹』のような作品では、主役以上に悪役に存在感が求められ、そのことが歌舞伎や舞台出身俳優起用の背景にある。多様な視聴者を引き付ける話題性とともに、キャスティングの妙が今作を特別な作品に押し上げている。

 第7話で繰り返された「しがない銀行員」というフレーズ。「あなたはしがない銀行員。そして私は国交大臣ですよ」と豪語する白井に、半沢が債権放棄の拒絶とともに突きつけたのは、「しがないちっぽけな存在」としての現場の人間の底力だった。「一つひとつのネジは小さく非力ですが、間違った力に対しては、精いっぱい、命がけで抵抗します」と語る半沢の脳裏には、ネジ工場を経営していた亡き父・慎之助(笑福亭鶴瓶)の姿があったに違いない。

 白井の失策によって、黒幕である箕部はみずから事態の収拾に乗り出した。国家という大きな力に、半沢はネジの回転でどこまで抵抗できるのだろうか? 

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
日曜劇場『半沢直樹』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堺雅人、上戸彩、及川光博、片岡愛之助、賀来賢人、今田美桜、池田成志、山崎銀之丞、土田英生、戸次重幸、井上芳雄、南野陽子、古田新太、井川遥、尾上松也、市川猿之助、北大路欣也(特別出演)、香川照之、江口のりこ、筒井道隆、柄本明
演出:福澤克雄、田中健太、松木彩
原作:池井戸潤『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社)、『半沢直樹3 ロスジェネの逆襲』『半沢直樹4 銀翼のイカロス』(講談社文庫)
脚本:丑尾健太郎ほか
プロデューサー:伊與田英徳、川嶋龍太郎、青山貴洋
製作著作:TBS
(c)TBS

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