大和田常務は敵か味方か? サラリーマン劇としての真価が問われる『半沢直樹』後半戦

『半沢直樹』サラリーマン劇としての真価

 7年前の第1作、「5億の融資」で大騒ぎしていた頃が懐かしい。その続編『半沢直樹』は、8月16日放送の第5話から原作小説第4作『銀翼のイカロス』に当たる「帝国航空編」に突入。証券会社への出向から東京中央銀行本社の営業第二部に次長として返り咲いた半沢(堺雅人)が、日本のフラッグシップである帝国航空の担当に。帝国航空は名門企業だが毎年、巨額の赤字を出し瀕死の状態に陥っていたところ、政府が介入し、融資元である銀行は7割の債権放棄を求められる。それを受け入れれば東京中央銀行の損失は なんと500億円にもなる。半沢は「政府の要請を回避しつつ、古い体質の帝国航空を組織改革した上で経営再建の道筋を立て融資した金額を回収できるか」という最高難度の“無理ゲー”をプレイさせられる。

 プレイヤーのレベルが上がれば上がるほど、対戦相手のレベルも上がる。ソシャゲでもあるあるの展開だが、結末に向けて、物語の大きな進化も見えてきた。2013年放送の第1作は、半沢がかつて父親を死に至らしめた宿敵である大和田常務(香川照之)の不正を暴き、頭取の前で土下座させるまでを描いた復讐劇であり、いわば私的怨恨による仇討ちの物語だった。今回の第2作でも前半は、証券会社に飛ばされた半沢が自分たちから大口案件を横取りした銀行の副頭取・三笠(古田新太)と伊佐山部長(市川猿之助)を成敗するという勧善懲悪の物語。その中で、半沢が部下の森山(賀来賢人)に語った言葉が印象的だった。サラリーマンには「組織や世の中はこういうものだという強い思い」が必要であり、半沢の場合、その信条は3つあると。「正しいことを正しいと言えること」「組織の常識と世間の常識が一致していること」「ひたむきで誠実に働いた者がきちんと評価されること」と半沢は述べ、「その当たり前が今の組織はできていない。だから、戦うんだ」と言った。

 ここからようやく、半沢は私怨や銀行内の派閥争いから解き放たれ、信念あるバンカーとしての闘いができるようだ。これまでは大和田ら重役たちのパワーゲームに巻き込まれ、そこに参戦するしかなかったが、そもそも仕事は「他人のため、世の中のためにするもの」であり、それを忘れたとき、自分のためだけに仕事をするようになって、サラリーマンは「内向きで卑屈で、醜くゆがんでいく、組織が腐っていく」とも語った半沢。その腐った人間のサンプルとして「三笠、伊佐山、大和田」の名を挙げた。第5話では帝国航空で再建プランを拒み情報をリークした永田役員(山西淳)を「あなたからは腐った肉の匂いがする」と糾弾。会社の中で保身に走り、自分の立場を利用して不正を働く者が半沢の敵なのだ。そんな敵に「近づくな!」と叫び、企業が「死に体」でないかを調査する半沢は、まるでホラー映画で腐ったゾンビと戦うゾンビハンターのようで面白い。

 このドラマは時代劇のようでもあり、歌舞伎役者が顔をそろえる荒事の演目のようでもあるが、仮にも日本を代表するメガバンクや航空会社が舞台である以上、半沢が「倍返しだ」と悪者を怒鳴りつけ退場させるだけでは、物足りない。今回は「恩返しだ」という新しいキーワードも出てきたが、どうしたら腐った組織を再生させられるのかということが、銀行の中でも外でも描かれていくことを期待したい。

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