『MIU404』、絶望の淵から最終章へ 『アンナチュラル』に続いて究極のテーマを描く
では、『MIU404』の第4機動捜査隊にはどんな使命があるのか? キソウ(機動捜査隊)の任務は夜勤もありの「重点密行」で、いち早く事件現場に駆けつけるのは捜査をスムーズに始めるため。第4キソウは臨時の応援部隊で、警察官の働き方改革のためという説明は最初にあったが、それだけではなく、その機動力ゆえに伊吹が言った「誰かが最悪の事態になる前に止められる」という効果も。「最悪の事態になる前」とは、被害者が殺されたり傷つけられたりする前であると同時に、加害者が罪を犯す前ということにもなる。
妻を殺された被害者でありながら最終的に加害者となってしまったガマさんは「俺はいつならガマさんを止められた?」と涙ながらに聞いた伊吹に、志摩を通じて「お前にできることは何もなかった」と答えた。そして、第9話からは、「ガマさんを止められなかった」という絶望の淵から這い上がっていく伊吹と志摩が描かれるようだ。予告で流れた「間に合う(間に合わせたい)」という2人の言葉が、これまでより切実感をもって響く。伊吹にとって「愛する人」に近い存在である麦(黒川智花)は裏社会の人間に狙われており、彼女の「居場所が突き止められたかもしれない」という展開も気になる。
死因不明の遺体が多いこの日本社会において「あったらいいな」という存在である『アンナチュラル』のUDIラボ。それと同じように、事前に被害者からの相談などで警察がリスクを知っていたにも関わらず殺人や虐待死が起こってしまうという問題がある中、『MIU404』の機動捜査隊404号はやはり架空の存在ではあるけれど、最悪の事態を回避するためいち早く動くリアルヒーロー。無敵ではないし、今回のように被害者も加害者も救えないケースもあるけれど、絶望した伊吹が志摩の手を取り、バディ成立以来、結束は最も強くなっている。真の相棒となった2人のリスタートに期待したい。
■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。
■放送情報
金曜ドラマ『MIU404』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、黒川智花、渡邊圭祐、金井勇太、生瀬勝久、麻生久美子、黒川智花
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、加藤尚樹
プロデュース:新井順子
音楽:得田真裕
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS