『MIU404』、絶望の淵から最終章へ 『アンナチュラル』に続いて究極のテーマを描く

『MIU404』、絶望の淵から最終章へ 『アンナチュラル』に続いて究極のテーマを描く

 油断した。こんなにしんどい結末になるなんて。『MIU404』(TBS系)第8話は、機動捜査隊404号の刑事・伊吹(綾野剛)にとって恩人である元刑事“ガマさん”が、愛する妻を殺した男を手にかけていたというバッドエンドに。しかし、キャスティングから考えれば、そもそもガマさんを演じるのが小日向文世という時点で、ただ居酒屋で伊吹の愚痴を聞いてあげるだけのいい人で終わるはずもなかったのだ。小日向は、ボランティアもする善き退官刑事が復讐心を抑えられず私刑を実行し、犯人を自宅でメッタ刺にしするという変化とも闇落ちとも言える様をさすがのリアリティあふれる演技で見せた。大ヒット公開中の映画『コンフィスマンJP プリンセス編』で演じる詐欺師リチャードとのギャップが大きすぎる!

 第8話のストーリーには5つの絶望があった。「愛する人が殺されてしまった」という絶望。「前科者である犯人は更生しなかった」という絶望。「その犯人を許すことができなかった」という絶望。「復讐を実行した男は元刑事(警察官)だった」という絶望。「元刑事を慕う現役の刑事は恩人を救えなかった」という絶望。どこをどう見ても救いがない。不良少年だった頃、ガマさんに救われて警察官になった伊吹がラストシーン、打ちひしがれて動けなかったのも無理はない。

「最愛の人を殺されたとき、犯人を許すことができるのか?」という究極のテーマは、同じ野木亜紀子脚本の『アンナチュラル』(TBS系)でも描かれた。主人公ミコト(石原さとみ)の同僚であるUDIラボの法医学者・中堂(井浦新)は、かつて恋人を無残に死なせた連続殺人犯をひそかに探していた。第5話では内縁の妻を殺された青年(泉澤祐希)がその犯人の女性を公衆の面前で刺すというショッキングな事件が起き、それには中堂も関わっていた。そして、終盤は中堂が犯人やその協力者を手にかけるのかどうかということが焦点に。最終回、薬物を使って復讐しようとする中堂をミコトがが「戦うなら法医学者として戦ってください」と説得するシーンが印象的だった。「不条理な事件に巻き込まれた人間が、自分の人生を手放して同じように不条理なことをしてしまったら、負けなんじゃないですか」と続けたミコトのセリフは、『MIU404』の伊吹がガマさんにかけたかった言葉でもあるだろう。しかし伊吹は「語彙力がない」ので、相棒の志摩(星野源)が代わりに言った。「ガマさん、なにがあってもあなたは人を殺しちゃいけなかった。全警察官と伊吹のために」。

 『アンナチュラル』のUDIラボは不自然死究明研究所という架空の機関で、日本では不自然死の遺体の多くが解剖されない中、ミコトたちは少しでも正しい死因を明らかにするため働いていた。その使命感に突き動かされた仕事ぶりが、『MIU404』でも真犯人へたどり着く大きなヒントとなり、ガマさんの代わりに誰かが逮捕されるという冤罪を防いだわけだ。警察のドラマである『MIU404』でもUDIラボが機能していることがちゃんと描かれ、さすがの野木脚本、構成のうまさが光った。こういったコラボは『科捜研の女』(テレビ朝日系)×『警視庁・捜査一課長』(テレビ朝日系)という前例があるとはいえ、やっぱり楽しいものだ。

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