『MIU404』分岐を誤り転がった先の“現在地” 九重と陣馬のタッグが繋ぎ止めたもの

『MIU404』転がった先の“現在地”

 ピタゴラ装置を転がる玉のように落ちることなく生きるためには、どうすればいいのか。それは、自分の立ち位置を把握すること。今、自分はどこに立っているのか。その人生の「現在地」を俯瞰で見つめなければならない。

 金曜ドラマ『MIU404』(TBS系)第7話の副題は「現在地」。トランクルームで発見された身元不明の遺体、退職金詐欺に遭ってトランクルームに住み着いた男性、ネットカフェに止まっている家出少女たち、SNSのIDを身分証明書代わりに提示する謎のコスプレイヤー……冒頭から次々と住所不定、つまり「現在地」が特定できない者たちが次々と登場する。

 遺体で見つかった男性は、周囲から生前“ケンさん”と呼ばれており「この生活から抜け出せないのなら、死んでるのと同じ」とぼやいていたという。「私も思います。なんでここにいるんだろう。いらないものを置いておく、この箱の中で……」。ケンさんが住処にしていたトランクルームの隣に住み着いた倉田も同じように絶望していた。社会との関わりが切れた箱の中。自分の立ち位置が見えないと、生きている意味を見いだせなくなったというのだ。

 そんな倉田に、謎のコスプレイヤーこと弁護士のジュリ(りょう)が「この世のほとんどに意味なんてない」と説く。世界が混乱している現在、思わぬ障害物を前に自分の無力さを痛感する人も少なくないだろう。自分の生きている意味ってなんだろう、そんなふうに考えてしまう日もあるかもしれない。

 でも、生まれたことにも、生きていることにも意味なんてあるようで、ないようなもの。「意味づけを変えれば、過去、今、未来が変わる」という言葉があるように、後付けによっていくらでも変えられる、あいまいなもの。トランクルームを「いらないものを置く箱」か、「手放せない宝物を残して置く場所」か……というぐらい、1つのモノを真逆に認識することができるくらいあやふやなのだ。

 身元がわからなかったケンさんの正体は、2人組の強盗犯として指名手配されている犯罪者だった。共犯者だった大熊もトランクルームに身を隠し、時効を待ちながら約10年もの時間をそこで消費していた。ケンさん以外との関わりをすべて断っていた大熊。その暮らしぶりが窺い知れるトランクルームを眺めて、伊吹(綾野剛)は「10年あったら何ができる?」と、志摩(星野源)に問いかける。

 「何でもできそうだ」。そう答えた志摩に、「10年間、誰かを憎んだり、腐ったりしないで、本っ当に良かった」と絞り出すように返す伊吹。「俺はラッキーだった。大熊の不幸は、10年間、ここから1歩も動かず、誰にも見つからなかったことだ」。その複雑な表情に、伊吹が大熊になっていたかもしれない、スイッチが過去にあったことを予感させる。

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