瀬戸康史の絶大な安心感 『私の家政夫ナギサさん』田所優太はこれ以上ないハマり役に
火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)で主人公・相原メイ(多部未華子)の恋のお相手候補として、スーパー家政夫ナギサさん(大森南明)と共に人気を二分しているのが、ライバル会社のエース社員・田所優太を演じる瀬戸康史だ。
外資系製薬会社「アーノルド製薬」のMRで性格もルックスも完璧、おまけに仕事もデキるという、非の打ちどころのない田所は、瀬戸康史にとってこれ以上ないほどのハマり役。誠実な人柄で、「患者さんファースト」だと医師や営業先から絶大な信頼を得ている根っからの人たらし。誰に対しても分け隔てなく接し、メイにとっては掴みどころがなく、まだ扱い兼ねている新入社員の瀬川(眞栄田郷敦)からも一目で気に入られ慕われるほど。鼻にかけたところがなく、同性からの人気まで高い。こう書くと嫌味なほどなのに、それを微塵も感じさせない。また、ここまで揃えば「胡散臭さ」のようなものが垣間見えてもおかしくないはずなのに、彼にはそれが全くない。完璧なのにそこはかとない人間味がある。等身大でいながら王子様的存在であり続けられる。控え目でありながらも香り立ってしまう、生まれながらのサラブレッド要素を持ち合わせる。甘いマスクと重厚な声質が、彼から醸し出される絶大な安心感に繋がっているのかもしれない。
『ルパンの娘』(フジテレビ系)でも、警察一家・桜庭家長男の和馬を演じ、婚約者である泥棒一家“Lの一族”の娘でもある華(深田恭子)との許されぬ恋のために翻弄される役どころを演じた。彼女が警察一族の人間でないという理由から、両親から結婚を猛反対される中、自身のアイデンティティーである桜庭家に対しても、また愛する華に対しても常に真摯であろうとする彼の姿に、思わず応援したくなってしまう視聴者も多かったのではないだろうか。華は自身の本来の姿をずっと彼に打ち明けられずにいたが、それは彼を信じられなかったからではない。信用に足りすぎる相手であるからこそ、真実を知ってしまえば自分と家族との間で悩む彼の姿が安易に想像できすぎてしまうが故のことだった。また、警察官という役柄のため鍛え上げられた身体、増量して臨んだ本格的なアクションシーンも印象的だった。
同じく好感度の高い青年役という点では『パーフェクトワールド』(カンテレ・フジテレビ系)で、山本美月演じるヒロインに一途に想いを寄せ続ける幼なじみ・是枝洋貴役を好演。なるほど、この高純度青年をことごとく報われない恋をするという配役に回すことで、物語に一気に切なさを増幅させていた。ヒロインの交際相手の鮎川(松坂桃李)は義足になり、気持ちも塞ぎ込みがち、少し卑屈になってしまっているところも垣間見える。そんな鮎川に太鼓判を押される恋敵を持ってこようと思うと、瀬戸康史だからこそ演じられる「陰りのないピュアさ」「嘘偽りのない相手ファースト、思いやり」なしにはそもそも成立し得ない役どころで、彼がそのポジションに選ばれたのも必然だったわけである。