使用楽曲はどう選ばれたのか? 『WAVES/ウェイブス』トレイ・エドワード・シュルツ監督に聞く
「重要なのは、キャラクターが何を語りかけているか」
ーートレント・レズナーとアッティカス・ロスがオリジナルスコアを手がけているのも音楽ファンにとってはうれしいポイントです。
シュルツ:僕はナイン・インチ・ネイルズが大好きなので、今回こうやって一緒にコラボすることができて本当にうれしかった。この作品はとにかく使用楽曲が多いので、その中にどうやってスコアを入れていくのか、その点に関して彼らがどう思うのか、オファーをしたときは正直不安なところもありました。でも彼らはとても協力的で、僕が何を考えているのか、この作品にどういう思いを込めたのかを教えてほしいと言われて、メールで送ったんです。そうしたら、僕のビジョンを理解してくれて、今回のコラボレーションが実現しました。トレントも完成した作品を観て「すごく誇らしい」と言ってくれたし、僕にとっても素晴らしい体験になりました。
ーー長編1作目の『クリシェ』、2作目の『イット・カムズ・アット・ナイト』、そして今回の『WAVES/ウェイブス』と、作品ごとに全く異なる印象を受けました。あなた自身、自分の監督としてのスタイルをどのように捉えていますか?
シュルツ:たしかに作品ごとにアプローチは異なりますが、共通しているのは、キャラクターが何を語りかけているかを考えること。それによって、スタイルを変えているんだと思います。主人公が女性だった1作目の『クリシャ』は、表現主義的、主観的に描くことにしました。2作目の『イット・カムズ・アット・ナイト』は、家に閉じ込められた家族の状況、彼らが体験することをいかにリアルに表現するか。どちらかというと、主人公の青年が体験することをそのまま伝えたかったんです。今回の『WAVES/ウェイブス』は、どちらかというと『クリシャ』のスタイルに似ていて、タイラーとエミリーの頭の中に入り込んで、それを表現する手法です。もちろん『クリシャ』との違いもあって、それは主人公たちが10代の若者であるということ。『クリシャ』からずっと一緒にやっている撮影監督のドリュー・ダニエルズとも話し合って、それならばもっと冒険してもいいんじゃないかということになって、色の使い方やカメラワーク、それと僕自身もいろんなことを体験して“この世の終わり”と思ったこともある10代の自由な感じを、カメラや色彩や音楽、そしてフロリダの開放的な雰囲気をとおして伝えたかったんです。
■公開情報
『WAVES/ウェイブス』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
監督・脚本:トレイ・エドワード・シュルツ
出演:ケルヴィン・ハリソン・Jr.、テイラー・ラッセル、スターリング・K・ブラウン、レネー・エリス・ゴールズベリー、ルーカス・ヘッジズ、アレクサ・デミー
作曲:トレント・レズナー&アッティカス・ロス
配給:ファントム・フィルム
原題:Waves /2019年/アメリカ/英語/ビスタサイズ/135分/PG12
(c)2019 A24 Distribution, LLC. All rights reserved.
公式サイト:https://www.phantom-film.com/waves-movie/