『MIU404』に感じるキャラクターたちの人生 単なる事件解決で終わらないチームの力量

解決だけで終わらない『MIU404』の力量

 金曜ドラマ『MIU404』(TBS系)の構成が、実に巧みだ。1勤務24時間の中で、できる限りの初動捜査をするという警視庁“機動捜査隊(通称:機捜)”を舞台にした、1話完結のノンストップドラマでありつつも、この世界での“人生”が続いている。

 「大事なことを思い出した。ここんとこ毎晩寝る前に、“あ、そうだ。アレを志摩に言っとかないと”って思ってたんだよ」と、伊吹(綾野剛)が語りかける。車の助手席で思い出す、志摩(星野源)に関する“アレ”とは、もちろん前回の事件現場での話。

 野生的な勘の鋭さと行動力で犯人を追い詰めた伊吹。拳銃を取り出してあわや撃つかと思われたが、銃声の代わりに鳴り響いたのは魔法少女のステッキに録音された可愛らしい決め台詞だった。最初から撃つつもりなどなかったという伊吹だったが、複雑な思いに駆られた志摩は思わずげんこつで殴ってしまった……アレのことだ。

 「謝ってもらってない」その伊吹の言葉が、後々第2話の重要なキーワードとなってくる。だが、もちろん視聴者はまだ知らない。むしろ、このときは「殴ってごめんなさいは? セイ!」と、じゃれる伊吹と煙たがる志摩の距離感を楽しむやりとりとして輝く。この2人が過ごしている時間の流れを示しながらも、このあとの事件を予感させる絶妙な会話劇が、さすがの脚本力と惚れ惚れする。

 第2話で起きた事件は、ハウスクリーニング会社での殺人事件。殺されたのはパワハラが過ぎると悪評高い専務で、容疑者として浮かび上がったのは、真面目な性格の会社員・加々見崇(松下洸平)だ。第一発見者によると、加々見は凶器を持ったまま逃走。田辺将司(鶴見辰吾)・早苗(池津祥子)夫妻を脅し、山梨県へと車を走らせる。すると、田辺夫妻と加々見の間には妙な絆が生まれていくのだった。

 加々見は父親に、そして田辺夫妻は息子に、それぞれ「謝ってほしかった」「謝りたかった」という過去を持っていたのだ。だが、その願いは永遠に叶わない。なぜなら、加々見の父親も田辺夫妻の息子も、すでにこの世の人ではなくなっているからだ。そこに志摩のかつての相棒というもうひとつの死も見え隠れする。志摩もまたこの2組の親子と同じ傷を抱えているのではないかと予感させる展開だ。

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