ロバート・ゼメキス製作総指揮ドラマ『マニフェスト 828便の謎』インタビュー
大根仁が語る、『マニフェスト 828便の謎』とロバート・ゼメキス 「人間ドラマがベースにある人」
「自分に置き換えることもできる」
――シーズン1をご覧になって、大根監督は、どんな感想を持ちましたか?
大根:初回での、飛行機が乱気流に飲みこまれるあたりはゼメキスっぽさを感じました。最初の10分で視聴者の心をグッと掴んでいく感じが流石だなと。で、そこからテンポよく話が進みながら、回を重ねるごとに、新たな情報が出てきて、物語のレイヤーがどんどん増えていくという。そういう、海外ドラマの王道的な面白さもありましたね。あと、最初に言ったように、ゼメキスは人間ドラマをきっちり描く人でもあるので、『マニフェスト 828便の謎』は、ドラマシリーズであることによって、その部分がよりいっそう浮き彫りになっている。ただ単に視聴者を引っ張るために風呂敷を広げているだけではなく、やっぱりこのドラマも、重要なのは人間ドラマの部分なんだと思います。
――確かに。「5年半後の世界」という、見た目はそれほど変わらないのに、どこか違和感がある世界で右往左往する登場人物たちも見どころのひとつですよね。
大根:慣れ親しんでいるはずの世界が、あるときを境に、まったく見知らぬ世界に感じられるような……今の時世を重ねるわけではないけど、そういうちょっと背筋が寒くなるような感じがあるんですよね。見た目はそんなに変わらないのに、ぼんやりとした不安がずっとある。このドラマって、どうしてそういうことになったのか、明確な理由がシーズン1ではよくわからないまま話が進んでいくじゃないですか。確固たる敵みたいなものが、なかなか見えてこない。ただ、長尺の連続ドラマシリーズの場合、その理由は、実はあまり重要ではないんですよね。
――というと?
大根:すべてがそうというわけではないですけど、映画ってやっぱり、何か終わらせなきゃいけないというか、ひとつ物語としての結論を出さなきゃいけないところがあるじゃないですか。だけど、ドラマシリーズって意外とそうでもなくて、慌ててつまらない結論を出すぐらいなら、むしろ終わらせないでくれっていう(笑)。このドラマも、多分そういう形で進んでいくんじゃないかと思うんですよね。逆に言うと、その理由が明らかになる過程で生み出される、細やかな人間ドラマの部分を楽しむような作りになっている。そういう意味では、最近のゼメキス映画と同じような、大人の味わいや、人生の陰影みたいなものが、ウェットになり過ぎずに、きっちり描かれているドラマになっているんじゃないでしょうか。そう、ゼメキスの作品って、ウェットやベタつきがないんですよね。かと言って冷めているわけでもなく。神の視点じゃないけど、達観しつつも地に足が着いている。『マニフェスト 828便の謎』にも、そういうゼメキスらしさを感じます。
――ちなみに、本国アメリカでは、初回の放送を約1000万人の人たちが観たようです。
大根:すごいですよね。どんな人が観ても楽しめる間口の広さみたいなものがあるドラマなんでしょうね。やっぱり最初の設定が抜群に面白いじゃないですか。5年半後の世界っていう。なので、観た人同士で、そういった話もしやすいと思うんです。自分が5年半後の世界にタイムスリップしたら、どんな感じになるだろうって。30年後とかだったら、好き勝手に想像できるけど、5年半後っていうのは、今いる現実もリアルに考えざるを得ないタイム感ですよね。奇想天外な話ではあるけれど、自分に置き換えることもできる。そこがやっぱり、このドラマのいちばん面白いところなんじゃないですかね。
■リリース情報
『マニフェスト 828便の謎<シーズン1>』
DVD発売中・レンタル中、デジタル販売中・レンタル中
DVDコンプリート・ボックス(4枚組):11,000円(税込)
発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
(c)Warner Bros. Entertainment Inc. & NBC Studios, Inc.
公式サイト:https://warnerbros.co.jp/tv/manifest/