竹野内豊の魅力は“受容力”にあり “分岐点”となった『ビーチボーイズ』から『素敵な選TAXI』まで

竹野内豊の魅力は“受容力”にあり

 そんな風に主演、助演ともにさまざまな顔を見せてきた竹野内が2014年に出演したのが『素敵な選TAXI』である。このドラマで画期的なのは、主人公である枝分が徹底的に「傍観者」だという点。毎回、人生の分岐点で選択をやり直したいと願う乗客たちが選TAXIに乗り、過去に戻って未来を変える……という設定なのだが、枝分はどんな乗客に対しても感情移入や介入をしない。ただ、ドライバーとして時間をさかのぼる手伝いをするだけ。その視座は、神のそれに近いとさえ感じる。

 そもそも枝分は元から“選TAXI”のドライバーだったワケではない。本来のドライバーは彼がいつも空き時間を過ごすcafe choiceの常連客・標(升毅)で、標が時空免許停止を受けた3カ月間、枝分に代理の運転手を頼んだといういきさつがある。

 竹野内は持ち前の「受容力」で、厄介な乗客たちのテンション高めの芝居を受け、絶妙なバランスで物語を運んでいく。枝分は主役であるのに自己主張はせず、自ら状況は動かさず、基本、喜怒哀楽も表に出さない。おもしろい。この役をここまでひょうひょうと&絶妙に演じられるのは彼だけではないだろうか。

 『素敵な選TAXI』以後も『この声をきみに』(NHK総合)でプライドの高いビジネスマンが朗読教室で出会った仲間たちに影響され変わっていく姿や、大ヒット作『義母と娘のブルース』(TBS系)で物語のキーとなる宮本良一など、さまざまなキャラクターを演じる竹野内豊。

 今後もどんな顔を見せてくれるのか楽しみにしつつ、長らく別の人の“相棒”を務めているあの人とふたたび組んだ大人のバディものが観たかったりもするのである。懐かしいなあ『ビーチボーイズ』。

■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p

■放送情報
『素敵な選TAXI』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00~21:54放送
出演:竹野内豊、各話ゲスト、バカリズム、南沢奈央、清野菜名、デビット伊東、升毅ほか
脚本:バカリズム
演出:筧昌也、星野和成、今井和久
音楽:本間勇輔
主題歌:aiko「あたしの向こう」
制作:関西テレビ、MMJ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/sentaxi/

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