ハリウッド映画やドラマシリーズと“カーニバル”の関係性 『ストレンジャー・シングス』などから探る

ハリウッド映画やドラマとカーニバルの関係

 さて、アメリカ人にとって、「カーニバル」は一体どういう意味を持つのか、この記事を書くにあたって、様々な映画でそれが登場するシーンを観ながら、何人かのアメリカ人の映画関係者に尋ねてみた。多かったのは「若さ」「若い時の記憶」という答えで、「純粋さの象徴」や、ロサンゼルスに住んでいながら「地元での年に一度のカーニバルには必ず家族一緒に行く」というコメントもあった。

 また、これらの答えだけでは飽き足らず、海外で広く使われている掲示板サイトRedditで、アメリカ人にとってカーニバルがどういった意味を持つのかを質問してみた。「最近はチケットや売り物の値段が上がり、行く人が減少している」「酔った10代の子がうろうろしている」といったどこか廃れたイメージを思い起こさせるコメントの他、「どう見ても簡単そうなゲームなのに、実際に賞品を取るのはほぼ不可能」「飼う場所もないのに、金魚すくいをやってしまう」といった、日本の夏祭りとどこか共通する声もあって、興味深かった。

 だが、それらのコメントの裏には、今ではスマートフォンやオンラインゲーム、配信プラットフォームなどの陰で、カーニバルの存在自体が少し時代遅れになっているという寂しさと、だが結局つい毎年足を運んでしまうというノスタルジアのようなものが感じられた。確かに、現代のニューヨークやロサンゼルスなどに生きる若者を描いた映画では、スマートフォンや現代のテクノロジーを介入させることは当たり前だし、ホラー映画やサスペンスの中でも、最近ではSNSの怖さを描く作品を観ることも多い。そういった中にあって、いまだにカーニバルがいろいろなシーンに登場し続けるのは、人々が心のどこかで、カーニバルで感じた「リアル」なときめきや興奮を、求めているからなのでないだろうか。

 コロナウイルス禍の緊急事態宣言が延長され、海外旅行の再開可能性についてもまだ先が見えない状況ではあるが、収束後にアメリカを訪れる機会があれば、ぜひカーニバルにも足を運び、映画やドラマで観たあの雰囲気を味わっていただきたい。そこにある古き良きアメリカの姿を経験することができるかもしれない。

■田近昌也
北海道出身。上智大学外国語学部卒。東京でインテリアの営業を経て、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院プロデューサー科を修了。その後メジャースタジオの長編映画企画開発部門などで経験を積む。

■配信情報
『ストレンジャー・シングス 未知の世界』
Netflixにて配信中

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