世間の厳しい目を跳ね返す? ドラマ版『映像研』がもたらしたキャラクタードラマの可能性

世間の厳しい目を跳ね返す? ドラマ版『映像研』がもたらしたキャラクタードラマの可能性

 監督の英勉は乃木坂46主演の映画『あさひなぐ』の監督だが、『映像研』と同じMBS制作のドラマ『賭ケグルイ』の監督として知られている。『賭ケグルイ』も役者の演技や編集のテンポ、照明のバランスが極端に誇張された漫画的な演出で、ギャンブル対決における登場人物の極限状態の心理を表現していたが、今回の『映像研』はより洗練されており、すべてのコンセプトが見事にハマっている。

 『イノセンス』等のアニメ映画の監督として知られる押井守は「すべての映画はアニメになる」と、かつて語っていたが『映像研』は、それを証明するようなドラマだ。

 浅草たちが妄想するアニメのイメージを再現したCG映像はもちろんのこと、役者の演技やテンポの良い編集を通して、アニメや漫画の持つ2.5次元の快楽をてらいなく追求している。

 それは演技に対するアプローチにもっとも現れている。絵で描かれたアニメは、何でも表現できてしまうが故に、リアリティの根拠が必要となる。だからこそ浅草の声優は女優の伊藤沙莉であり、演技の面においては地に足がついており、アニメ的な自由度はむしろ抑制されていた。対して実写映像の場合は、生身の俳優がカメラの前にいるという事実においてリアリティが担保されている。だから演技の面でいくらでも飛躍することができる。

 その意味で、今回もっとも驚いたのは浅草みどりを演じる齋藤飛鳥の存在感だ。本当に、アニメのキャラクターが現実に飛び出してきたようである。このあたりは齋藤たちが、アイドルという虚像を演じる存在だから相性が良かったのだろう。

 『ゆるキャン△』(テレビ東京系)の福原遥や大原優乃の演技を観た時も思ったが、今の若手女優は漫画やアニメのキャラクターを演じるのがとても上手い。漫画やアニメを原作としたドラマ、あるいは漫画やアニメのエッセンスを実写に持ち込んだドラマを、筆者は“キャラクタードラマ”と呼んでいる。キャラクタードラマは、90年代に大きく発展し、脚本では『南くんの恋人』等のテレビ朝日のドラマで岡田惠和が、演出では『金田一少年の事件簿』等の日本テレビのドラマで堤幸彦が切り開いたユニークな映像表現である。

 漫画やアニメを実写化すると、出演俳優のイメージがキャラクターと合っているかどうかが賛否を呼び、ネガティブなものとして捉えられることが多い。しかし『映像研』のようなドラマを観ると、キャラクタードラマにはまだまだ無限の可能性があるのだとわかる。今後が楽しみである。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
ドラマ『映像研には手を出すな!』
MBS/TBSドラマイズム枠にて放送中
MBS:毎週日曜24:50〜/TBS:毎週火曜25:28〜
出演:齋藤飛鳥、山下美月、梅澤美波、小西桜子、グレイス・エマ、福本莉子、松崎亮、鈴之助、出合正幸、高嶋政宏
原作:大童澄瞳『映像研には手を出すな!』(小学館 『月刊!スピリッツ』連載中)
監督:英勉
(c)2020 「映像研」実写ドラマ化作戦会議 (c)2016 大童澄瞳/小学館
実写映画&ドラマ公式サイト:https://eizouken-saikyo.com/
実写映画&ドラマ公式Twitter:@eizouken_saikyo

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