『トレイン・ミッション』地上波初放送! 管理職を放棄して暴れ回るリーアム・ニーソンを堪能せよ
現場から管理職へ。普通はそういうものである。これはアクションスターも同様だ。年齢を重ねるごとに、1人で奮闘するよりも、若手立てる方向へシフトしていく。シルヴェスター・スタローンは『クリード チャンプを継ぐ男』(2015年)でセコンドに立ち、ジャッキー・チェンは『カンフー・ヨガ』(2017年)で若者たちがハイエナと戯れるシーンに尺を割いた。しかし、リーアム・ニーソンは違う。この人はなぜか管理職から現場に降りてきた、非常に珍しいパターンのアクションスターだ。今週末4月11日、連日のコロナの影響でニーソンの主演作『トレイン・ミッション』(2018年)がフジテレビ系で放送される。今回はコレにかこつけて、ニーソンの経歴と同作の魅力について解説していきたい。
リーアム・ニーソン、御年67歳。しかし、193cmの長身とボクシングで鍛えたガタイは、年齢に不釣り合いな存在感を身にまとっている(日本人でたとえるなら、ゴツい松重豊だ。彼で『孤独のグルメ』をリメイクしてほしい)。70年代から俳優として活動を始め、スティーヴン・スピルバーグの『シンドラーのリスト』(1993年)で大ブレイク。そして同作以後、ニーソンは人の上に立つ人、つまりは管理職役を立て続けに演じる。『ロブ・ロイ/ロマンに生きた男』(1995年)では実在の英雄を、『マイケル・コリンズ』(1996年)では実在のアイルランドの独立運動家を演じ、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999年)ではジェダイになって後のダースベイダーを、『バットマン ビギンズ』(2005年)ではバットマンを鍛えた(敵役だが)。ここまで色々な人を導いた俳優もいないだろう。また、先に挙げた『ロブ・ロイ』や『エピソード1』、あるいは『ダークマン』(1990年)など、実はキャリアにおけるアクション率が非常に高いのだが、この頃はアクションスターというより「演技派」という扱いだったように思う。
そんな感じですっかりMr.管理職となったニーソンだが、彼のキャリアがゼロ年代後半に一変する。荒木飛呂彦先生も大好き『96時間』(2008年)だ。元諜報員の凄腕野郎が人身売買組織を1人で壊滅させるシンプルなアクション映画だが、ニーソンの異様な迫力とキレのあるアクションが存分に楽しめる快作に仕上がった。この大ヒットをキッカケに、ニーソンは管理職役を放棄して、掟破りのアクションスターへ天下り。狼と殴り合う『THE GREY 凍える太陽』(2012年)、宇宙人を前に「ムムム!」と顔をしかめるだけの役なのに、美味しいところを全部もっていく『バトルシップ』(2012年)……こうした天下り後のキャリアにおいて、ニーソンは1人の監督と出会う。それこそがジャウマ・コレット=セラだ。セラは『蝋人形の館』(2005年)や『エスター』(2009年)と、ホラー/サスペンス映画で腕を鳴らしてきた人物なのだが、彼とニーソンは非常に相性がよかった。2人は『アンノウン』(2011年)で出会ってから、立て続けに『フライト・ゲーム』(2014年)、『ラン・オールナイト』(2015年)とコラボを続けている。そしてタッグ4本目にして直近の作品が、本作『トレイン・ミッション』(2018年)である。
その日、保険の営業マン、マイケル・マコーリー(リーアム・ニーソン)は会社でいきなりクビを言い渡される。「妻と子供にどう説明しよう? 明日からの生活はどうしよう? 俺、マジメに頑張ってきたんだけどなァ……」疲れた顔で通勤電車で帰途につく。すると謎めいた女(ヴェラ・ファーミガ)が「お金が必要でしょう? 私との取り引きに応じてくれたら、高額の報酬を約束する」と、自販機の裏に書いてある怪しいポスターのように迫って来た。さすがに断るマコーリーだったが、あれよあれよという間に罠に落ちていき、女との取り引きに応じることに。やがて巨大な陰謀が動き出すが、マコーリーは持ち前の知恵と、元警官ゆえの腕っぷしの強さで謎に立ち向かっていくのだった。