有村架純以外では成り立たない絶妙な企画 『有村架純の撮休』は二つの点で異色の作品に

有村架純以外では成り立たない絶妙な企画 『有村架純の撮休』は二つの点で異色の作品に

 WOWOWオリジナルドラマ『有村架純の撮休』が面白すぎる。タイトル通り、日本中の誰もが知る人気女優有村架純が、撮影中の架空のドラマ(『検察官 轟夕子』)が共演者やロケ先の都合などで突然1日だけ撮影休止になったことで、その空いた1日をどのように過ごすかを8つのエピソードで描いたオムニバス作品。企画そのものは、ケイシー・アフレック監督の『容疑者、ホアキン・フェニックス』(2010年)あたりをきっかけに、昨今国内外で数多く作られてきた有名人を主人公にしたフェイクドキュメンタリーの一種で特別な目新しさがあるわけではないのだが、この『有村架純の撮休』は二つの点で異色の作品となっている。

 一つは、それぞれのエピソードが作り手(監督、脚本家)が想像した「有村架純の実像」(ノンフィクション)をもとにした独立した物語(フィクション)となっていることだ。これまで有村架純の出演作品をほとんどすべて見てきたような熱心なファンから、テレビのCMくらいでしか認知してない人まで、すべての視聴者にはそれぞれ有村架純のイメージがあって、それは部分的には似通っていて、部分的には異なっているだろう。本作『有村架純の撮休』では、作り手という点では特権的な立場ではあるが、有村架純リテラシー(略してアリムラシー)的には視聴者と変わらない立場から、有村架純像の8つのバリエーションが変奏されていく。

 もう一つは、その作り手の顔ぶれの豪華さだ。8エピソード中、是枝裕和監督が2エピソード、今泉力哉監督が2エピソードの監督を担当。是枝監督がテレビドラマの演出をするのは、『ゴーイング マイ ホーム』(関西テレビ・フジテレビ系)以来8年ぶり、もちろん『万引き家族』でカンヌ映画祭のパルムドールを受賞して以降では今回が初となる。もともとテレビのドキュメンタリー作品のディレクター出身で、テレビドラマというフォーマットにも強い愛着がある是枝監督とはいえ、このタイミング、そしてあくまでも5人の監督のうちの1人という立場での今回の参加は、そのフットワークの軽さに驚かずにはいられない。一方、今泉監督で驚かされるのは、そのアウトプットの旺盛さだ。2020年に入ってからだけでも既に『mellow』、『his』と2作が公開されていて、5月には『街の上で』の公開も控えている。しかも、いずれの作品も様々なかたちの恋愛をテーマにした目を見張るような秀作で、その一貫性とアベレージの高さには恐れ入るしかない。ちなみに、脚本はもちろんのこと、有村架純のスタイリングや住んでいる部屋までそれぞれのエピソードによって違うのも、通常のフェイクドキュメンタリーとはまったくアプローチが異なるところだ。

 各エピソードは約24分だが、是枝監督が担当した第1話『ただいまの後に』のみが15分拡大版となる。昨今、日本の女優でもYouTubeに進出して、自身のプライベートを配信する動きもあるが、この『ただいまの後に』の「撮休になって突然実家に帰る」という設定はまさにそれを予見していたかのようでもある。風吹ジュン、満島真之介をはじめ優れた役者がしっかりと脇を固めているものの、兵庫県(実際に有村架純の出身地)という舞台設定も含めて、作品のタッチは是枝監督的なリアリズム描写が徹底されている。『ただいまの後に』で印象的だったのは、母親との腹の探り合いの中で、刻々と変化していく有村架純の表情のニュアンスの豊富さだ。「こんな有村架純の表情、これまで見たことがない」という瞬間の連続。そのあまりの相性の良さに、「いつか是枝監督の長編映画に出演する有村架純を見てみたい」と思わずにはいられない。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

音楽記事ピックアップ