ソン・ガンホ出演作にハズレなし! ポン・ジュノ、パク・チャヌクらに求められ続ける理由

ソン・ガンホが名監督に求められ続ける理由

 その後、ソン・ガンホはパク・チャヌク作品には2002年公開の『復讐者に憐れみを』に出演。幼い娘を誘拐されてしまった父親を演じる。本作のソン・ガンホは近年見せているような、気のいい笑顔のおじさんではなく、寡黙な復讐者である。そんな父親が、誘拐犯のひとりであるペ・ドゥナ演じる女性をいたぶるシーンは、残虐でもあり、エロティックな感覚を微量ながらも感じさせるものがあった。

 そんなエロティックな魅力は、2009年公開のパク・チャヌク作品『渇き』で炸裂。この作品のソン・ガンホは神父という職業に就きながらも、人を救えないジレンマに陥り、伝染病の人体実験に志願するという役を演じる。人体実験は、彼自身にとっては自殺願望を叶える手段だと思っていたのだが、その算段はあえなく失敗してしまう。

渇き [DVD]

 なぜか神父は500分の1の確率で死を免れてしまい、元の生活に戻るのだが、彼の身体は人間の血液なしでは生きられないものになっていた。そんなとき、幼なじみとその妻に再会し、彼らの生活に入り込むようになっていく。バンパイアになってしまった神父は、血を欲するのと同じように、欲望が徐々に抑えられなくなっていき、幼なじみの妻と関係を持ってしまう。

 緑と赤の聞いた暗く湿った映像、人の強い情念、そしてエロティックなシーンなど、パク・チャヌクらしさが随所に見られる作品の中で、ソン・ガンホも一糸まとわぬ姿で欲に溺れていく。正直、『タクシー運転手』や『パラサイト』を観た後に本作を観ると、意外性に驚いたり、気恥ずかしい気持ちが出てしまうかもしれないが、『JSA』『復習者に憐れみを』というパク・チャヌク作品を順番に観て行けば自然に受け入れられるのではないだろうか。

 実際、寡黙で無表情なままで欲に溺れていくソン・ガンホはちょっと他の誰にも出せないセクシーさを醸し出していた。

 ソン・ガンホ作品はまだまだ紹介しきれない程あるが、ここに挙げた作品を観ただけでも、チャン・フン、パク・チャヌク、ポン・ジュノと言った名だたる監督たちが、それぞれの異なるイメージを持って何度もオファーしたくなる理由の一端がうかがえた気がした。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■公開情報
『パラサイト 半地下の家族』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン
監督:ポン・ジュノ
撮影:ホン・ギョンピョ
音楽:チョン・ジェイル
提供:『パラサイト半地下の家族』フィルムパートナーズ
配給:ビターズ・エンド
2019年/韓国/132分/2.35:1/英題:Parasite/原題:Gisaengchung/PG-12
(c)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる