長谷川博己、『麒麟がくる』主演としての決意 「時代が求める明智光秀になれたら」

長谷川博己、『麒麟がくる』主演としての決意

 1月19日からスタートしたNHK大河ドラマ『麒麟がくる』。近現代史を描いた『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)』から一変、本作の舞台は大河ドラマでも最も人気が高いと言われる「戦国時代」だ。

 主人公となるのは、日本史最大の事件とも呼ばれる「本能寺の変」の首謀者・明智光秀。光秀を中心に、織田信長、斎藤道三、今川義元、豊臣秀吉、徳川家康といった後々まで語り継がれる英傑たちの、「英傑以前」の姿が本作では紡がれていく。

 光秀を演じるのは、映画『シン・ゴジラ』『半世界』、連続テレビ小説『まんぷく』(NHK総合)など、さまざまな顔を見せてきた長谷川博己。織田信長の家臣として、戦国時代を駆け抜けた明智光秀を演じるにあたり、長谷川は今何を思うのか。じっくりと話を聞いた。

なぜ明智光秀が今の時代に必要だったのか

ーー本作の主人公・明智光秀は、これまで“ヒーロー”としては描かれてこなかった人物です。まず、演じると決まったときの率直な気持ちを教えてください。

長谷川博己(以下、長谷川):光秀は、織田信長家臣団随一の切れ者といったポジティブなものから、陰湿な性格の反逆者といったネガティブなものまで、さまざまイメージがある人物なので、どんなふうに演じることができるか楽しみにしておりました。戦国時代の英雄である織田信長、豊臣秀吉、徳川家康ではなく、明智光秀を大河ドラマの主役に据えること、そしてその主役を任せてもらえたことに興奮しました。皆さんが期待している明智像ではないかもしれませんし、求めていた明智像になるかもしれません。いずれにせよ、賛否両論起きる新しい明智像になることは間違いないと思っています。

ーー光秀を演じるにあたってどんな準備をされたのでしょうか。

長谷川:光秀が描かれている小説や歴史資料まで、読むことができるものはできるだけ読むようにしました。でも、調べれば調べるほど光秀という人物がわからなくなるんです。それこそ、資料によっては性格がまったく逆のこともありました。なので、現場にはそういった調べたものは持ち込まずに、池端(俊策)先生の脚本の中の光秀を演じようと決めました。“「本能寺の変」で主人である信長を討つ”という史実はあるので、どうしてもそこから逆算した光秀像を作らないといけないと最初は思っていたんです。でも、光秀の最後の選択もそこに至るまでの積み重ねがあったからこそ生まれたものなので、できるだけ無垢の状態で現場にはのぞむように心がけました。

ーー池端さんの脚本にはどんな魅力がありますか。

長谷川:池端先生の脚本は本当に繊細でなかなか一筋縄ではいきません。行間で表現が変わるといいいますか、色で例えると、白黒はっきりしているわけではなく、淡い色あいを持っている印象です。脚本を読んでいると池端先生の筆が踊っている感覚があります。ただ、演じるにあたっては非常に難しい。とにかく光秀は黙っていることが多いんですが、脚本にも「……」が非常に多くて(笑)。斎藤道三に無茶なことを言われても「……」、帰蝶に何か言われても「……」。僕はそこを演技として埋めないといけません。単純に感情をわかりやすく表現すればいいわけではないので、日々やりがいを感じています。

ーー池端さんには光秀を演じるにあたっての相談も?

長谷川:光秀は「選択」を強いられることが多数あります。前後の行動を踏まえて、光秀の感情を想像して、こちらの選択をするであろうと思うことも、史実ではまったく逆の選択をしていることが多いんです。だから矛盾を感じてしまう。脚本にも、その感情の答えが書かれているわけではないので、池端先生に相談しました。池端先生は、「どちらの可能性もあって五分五分だったものを、光秀は瞬発的にそのときそのときに決めていたんじゃないか」とおっしゃっていたんです。確かにあの時代を生き抜くために、感情論ではない、どうしようもない選択をせざるを得ないときもあったのではないかと。先ほどの話とも重複しますが、僕も現場で瞬発的な芝居ができるように、作り込み過ぎないようにまっさらな状態でのぞむようにしています。

ーーこれまで映画や小説で描かれてきた光秀の一面として、「中間管理職」としての要素があると思います。その点において、光秀は現代人の多くが求める存在のようにも思います。

長谷川:上司となる信長にも言うときは言いますし、知性と品性で己の道を光秀は突き進んでいきます。“ヒーロー”という言葉は合わないかもしれないのですが、「今の世の中にこんな人がいたらいいな」と思っていただける人物ではないでしょうか。なぜ、この時代に明智光秀を主役とするドラマが必要だったのか、それが感じられる作品になっているのではと思います。

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