「2019年」を舞台にしたSF名作『ブレードランナー』『AKIRA』『図書館戦争』 ディストピアは現実に?
間もなく今年も終わる。2019年は、『ブレードランナー』(1982年)など、過去のSF作品でしばしばとりあげられた未来の年だった。それがもうじき、過去になろうとしている。
これまでにも、かつて想像された年が訪れ、過ぎていくことが何度もあった。ジョージ・オーウェル原作(1949年刊)で1956年と1984年に映画化された『1984(年)』は、ニュースが書き換えられ、国民が徹底的に監視されるディストピアを題材にしていた。スタンー・キューブリック監督は、SF作家アーサー・C・クラークもシナリオに参加した『2001年宇宙の旅』(1968年)で、有人の木星探査飛行、知能を持ったコンピュータの暴走、人類の超進化を描いた。実際の1984年、2001年になった時には、作品で語られたテクノロジーや危惧がどこまで現実化したか議論になったものだ。
その種の象徴的な年として日本で注目された1つが、1999年である。フランスの占星術師が1999年の人類滅亡を告げていたとする五島勉著『ノストラダムスの大予言』(1973年)はベストセラーになり、映画化(1974年)もされた。オカルト・終末ブームだった当時のそんな世相から着想を得たのが、浦沢直樹のコミック『20世紀少年』(続編『21世紀少年』も含め2007年完結)だった。これも3部作の形で映画化されている(2009年完結)。
同作では1969年に子どもたちが遊びで書いた「よげんの書」の通り、2000年12月31日に巨大ロボットが出現し細菌兵器による同時多発テロが各国で起きる。2015年には西暦が終わり、世界滅亡を企み政党を作って暗躍していた黒幕「ともだち」が世界大統領となり、「ともだち暦」が始まる。この物語は「ともだち暦3年」、つまり西暦が続いていれば2017年までを扱っていたので、今からみれば近過去が舞台だったわけだ。
そして、2019年の今年を舞台にした有名な国内作品が、大友克洋がコミックで発表し(1990年完結)、自らの監督脚本でアニメ映画化(1988年)した『AKIRA』である。1982年に新型爆弾で東京は破壊されたものの、その後、東京湾に「ネオ東京」が築かれ、2020年の東京オリンピックを控え再開発が進んでいる。暴走族、ゲリラ、新興宗教、軍がせめぎあうこの街で、強大なパワーを持つ超能力者をめぐり激闘が勃発するストーリーだ。
『AKIRA』のように徹底的な破壊の後に再建された社会を舞台とするのは、SFでは1つのパターンになっている。例えば、『新世紀エヴァンゲリオン』(1995-96年放送)は、世界人口の半分が失われた2000年のセカンドインパクトを経て、2015年には第3新東京市が築かれていた。新首都というモチーフを『AKIRA』から受け継いだのだ。2作はいずれも、苛烈な市街地空襲や2発の原爆投下で敗戦した日本が、驚異的な復興をとげた過去の歴史を未来に投影して想像した物語といえる。再び立ち直った未来社会は、またも壊滅の危機に陥るわけだが。