連ドラ完走直後は舞台に? 広瀬すず、志尊淳、山田裕貴、奈緒ら若手俳優たちの健闘

舞台でも健闘する若手俳優たち

 『終わりのない』で、3年ぶりに舞台で座長を務めている山田は、狂言回しのポジションも兼任。つまり、主役としてはその佇まいで、物語の進行役としてはその言葉で、観客を導いていかなければならない。これをもっとあけすけに言うならば、彼には出番の休みがほぼなく、終始しゃべりっぱなし、ということである。同時期に出演ドラマをかけ持ちし、さらに出演映画の公開などが重なることも多い山田だが、それを今年は少々セーブしていた印象。やはり朝ドラと、この舞台に的を絞ってのことだったのだろうか。これまでは瞬発力が彼の強力な武器だったように思っていたが、今作では作品を牽引する座長としての器の大きさと、観客を物語世界に引き込む繊細で巧みな話芸をも持っていることを示している。

世田谷パブリックシアター+エッチビイ 『終わりのない』 撮影:田中亜紀

 そんな山田の相手役を務めているのが奈緒で、彼女も広瀬と同じく、今作が初舞台だ。彼女が一般的に大きな注目を集めるようになったのは最近のことで、いま現在、目まぐるしい日々を過ごしているに違いない。朝ドラ『半分、青い。』(NHK総合)に出演以降、彼女を映像作品で見る機会は大幅に増えた。今年は主演ドラマも放送され、初主演映画『ハルカの陶』も封切りとなったばかりだ。このタイミングでの初舞台は、次なるステップへ向かうためのターニングポイントともなりそうだ。しかし今作の出演者の半数は、作・演出の前川知大が率いる劇団「イキウメ」の俳優たちで、これまた経験値が圧倒的に違う。プレッシャーは大きかったはずである。しかしながら、先輩俳優たちの胸を借りることができる貴重な機会であるのも事実だろう。

 映画やドラマなどの映像作品以上に、“共同クリエーション”の意味合いが強いのが舞台作品だ。そこではキャスト、スタッフ関係なく、みなが同じ時間を共有することになる。そして舞台上には毎公演ごとに、一つの作品が、ナマモノとして再創出される。作品に描かれる時間がいかに長大なものであっても、劇場内で作り手たちと観客が共有するのも単一の時間だ。俳優たちは役の感情のスイッチを、映像のように編集などによって処理されることはなく、すべて自分自身でその任を負わなければならない。それを実現するために、演じる役との向き合う濃密な時間があり、稽古での同じ演技の反復(積み重ね)によって、純粋な技術力の向上も期待できるのだろう。舞台に立つということは、“演じること”を見つめ直す機会となってもいるのではないだろうか。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter

■舞台情報
NODA・MAP第23回公演『「Q」:A Night At The Kabuki』
・東京公演
10月8日(火)~10月15日(火)東京芸術劇場プレイハウス
11月9日(土)~12月11日(水)東京芸術劇場プレイハウス
・大阪公演
10月19日(土)~10月27日(日)新歌舞伎座
_北九州公演
10月31日(木)~11月4日(月・祝)北九州芸術劇場 大ホール
作・演出 :野田秀樹
音楽 :QUEEN
出演 :松たか子、上川隆也、広瀬すず、志尊淳、橋本さとし、小松和重、伊勢佳世、羽野晶紀、竹中直人、野田秀樹
公式サイト:https://www.nodamap.com/q/

世田谷パブリックシアター+エッチビイ 『終わりのない』
・新潟公演
 11月30日(土)りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館・劇場
・宮崎公演
12月4日(水)・メディキット県民文化センター(宮崎県立芸術劇場)
脚本・演出:前川知大
原典:ホメロス「オデュッセイア」
監修:野村萬斎
出演:山田裕貴、安井順平、浜田信也、盛隆二、森下創、大窪人衛/奈緒、清水葉月、村岡希美/仲村トオル
公式サイト:https://setagaya-pt.jp/performances/owarinonai20191011.html

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