韓国でエンタメ社会派映画が生まれる理由とは? 過去の“失敗”に迫る『国家が破産する日』の凄み
それらの作品が、冒頭でも書いたように『タクシー運転手』や『1987、ある闘いの真実』、もしくは若い検事が韓国の実際の政権交代に翻弄されるフィクションの『ザ・キング』(2017)であったのだ。しかし、映画祭での上映中止と公開、社会への疑問の高まりによる作品作りと聞くと、何か現在の日本の状況にも重なって感じられる。だが、日本ではいまだに怒りをあいまいにしたり、「中立である」と断った上で作られていることが多いのではないか。
韓国では『国家が破産する日』を見ても、あきらかに社会の中のおかしな状況に対しての「怒り」が包み隠さずに描かれているし、過去の失敗の本質をつきとめるのが映画の役割であると考えているように思えてくる。実際に失敗の本質に迫っているもののほうが、エンターテインメントとしての完成度もおのずと高くなるのではないか。
失敗を見つめて前に進むことをあきらめずに、なんとか少しでも自分たちの暮らしが良くなることを願っていることがストレートに描かれている。だから、観ていて胸が熱くなる。こうした社会派の作品の中のいくつかは、人口およそ5000万人の韓国で、1000万人以上の人に見られているのだから、韓国での危機意識がいかに広く共有されているかということに驚かされるのだ。
■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。
■公開情報
『国家が破産する日』
シネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開中
監督:チェ・グクヒ
出演:キム・ヘス、ユ・アイン、ホ・ジュノ、ヴァンサン・カッセル
提供:ツイン、Hulu
配給:ツイン
2018年/韓国映画/114分/カラー/5.1chデジタル/ビスタ/日本語字幕:福留友子/字幕監修:浜矩子
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公式サイト:http://kokka-hasan.com/