『だから私は推しました』から目が離せない理由 “上昇”と“下降”を繰り返す独特な構造を探る

『だから私は推しました』から目が離せない理由 “上昇”と“下降”を繰り返す独特な構造を探る

 「だから……推したんです。だから私は推しました」

 本作、第1話の冒頭は、主人公・遠藤愛(桜井ユキ)の長い独白からはじまる。その裏でカットバックする映像には、手術室に勢いよく運びこまれるストレッチャーと、キャリーケースを引っ張りながら疾走する女性・ハナ(白石聖)の姿が。どうやら本作のタイトル『だから私は推しました』には、地下アイドルを「推しました」という意味に加え、瓜田(笠原秀幸)なる男を「押し倒しました」という意味づけがなされているらしい。

 8月31日の放送で第6話を迎えるNHKよるドラ枠『だから私は推しました』(全8話)。「地下アイドル業界」やそこにハマっていく「女オタ」のリアルな姿を描くことで、アイドル好きではなくても「好きなもの」に忠実に生きたいと望む視聴者の心情に直撃するドラマになっている(参照記事:『だから私は推しました』をアイドルオタクが見ると? 「現場あるある」の数々とそのリアリティ)。

 しかし本作から、なんだか目が離せないのは、そうした共感に加え、もうひとつ大きな理由があるようにも思うのだ。それは、タイトルのもつダブルミーニングにも関連した、ストーリーが孕む“不安定感”。アイドルとそのオタクの単純なサクセスストーリーにはなっていかないところにこそ、本作に惹きつけられてしまう謎の魅力が隠されている。 

「上昇」と「下降」を繰り返す不安定な旅路

 言ってしまえば地下アイドル自体が、いつ無くなってしまうかわからない危うい存在だからこそ、それをリアルに描く物語の構図や登場人物たちの心情面・経済面が不安定になるのは当然のことかもしれない。しかし、このドラマにさらなる「不安定感」が生まれているのは、「上昇」と「下降」という相反するイメージがないまぜなまま内包されているからだ。

 まずこのドラマを構成する2つの大きな要素として、地下アイドルである「サニーサイドアップ」(通称サニサイ)を愛たちが地上へ押し上げていくという「上昇」のストーリーと、愛が瓜田を押し倒すまでにいったい何があったのかを探る「下降」のストーリーが存在していることがわかるだろう。ここでは、サニサイが地上へと“上がる”につれ、瓜田が“落ちる”刑務所のシーンへと近づいていく、反比例のギミックが仕掛けられている。

 「上昇」と「下降」の混交が作りだすストーリーおよび登場人物の不安定感は随所に現れている。例えば第2話では、異常なほどハナに執着する瓜田を遠ざけるために、愛はチェキ券の購入システムに手を加えることを提言する。システムが変わったことでハナに意外な人気があったことがわかるのだが、一方の瓜田はハナが自分の手から離れていくことに耐えられなくなり、その後はライブに現れなくなる。この場面は普通に考えれば一件落着に見えるものの、実際、瓜田という太客(多額のお金をつぎ込む客・ファンのこと)はハナの生命線であり、唯一の給与であるキックバックの額は“下がって”しまう。

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