『だから私は推しました』をアイドルオタクが見ると? 「現場あるある」の数々とそのリアリティ

ドルオタが見た『だから私は推しました』

 「なぜアイドルが好きなの?」という問いに、一言で答えることは難しい。パフォーマンスから元気をもらえるから。推しとコミュニケーションを取るのが楽しいから。メンバー同士のわちゃわちゃを見てると幸せな気持ちになるから。誰かが夢を叶えていく姿を応援したいからーー。

 言い出せばキリがないけれど、全てに共通しているのは「自分の人生が豊かになる」ということだろうか。アイドルオタクに限った話じゃないけれど、やっぱり趣味があると人生は何倍も濃く、楽しくなる。仕事や人間関係で辛いことがあって、アイドルに救われた経験は、筆者にも何度もある。

 現在NHKで放送中のドラマ『だから私は推しました』は、ひょんなきっかけで地下アイドルにハマったアラサーOL・愛(桜井ユキ)の物語。婚約者に振られ、会社の同僚との関係にもモヤモヤしていた愛は、たまたま訪れたライブハウスで、地下アイドルグループ「サニーサイドアップ」(通称・サニサイ)のメンバー・ハナ(白石聖)と出会う。

 ハナはグループの中でも一番の落ちこぼれ。ステージ上でオドオドとパフォーマンスするハナの姿に、人目ばかり気にしている情けない自分を重ねた愛は、人生で初めてアイドルオタクになり、ハナを“推す”ことに決める。

 ライブ会場で初めてレスをもらったり、一緒にチェキを撮ったり。現場に行きたいから仕事を頑張って片付けたり、オタ活で身につけた「合いの手」スキルを活かして営業のカラオケで大活躍したり……。初めてのドルオタライフを満喫する愛は、婚約者に振られて落ち込んでいた頃の何倍もイキイキしていて楽しそうだ。

 ここから愛とハナ、二人三脚で武道館公演を目指す……というサクセスストーリーなのかと思いきや、事態は一転。なんと一年後、愛は警察で取り調べを受けているのだ。刑事とのやりとりから推測するに、どうやら誰かをどこかから突き落として、その罪に問われている様子。一体誰を、何のためにーー? 一年前の愛の「オタ活」シーンと、一年後の「取り調べ」シーン。この二つの高低差にハラハラしていると、あっという間に30分が過ぎてしまう。

 少しずつ明かされる事件の顛末も気になるところだが、ドラマ内に登場する「アイドルオタク現場あるある」の再現度も見事で面白い。例えば第3話、愛のアイドルオタク仲間たちが、推しからサインをもらったTシャツの撮影ポーズをどうするかと話し合うシーン。

「こんなのどうです?『Teacher Teacher』」
「あっ、『What is Love?』は?」
「違う違う、世代考えろよ。『UFO』ですよね?」
「『ブレインストーミング』だよ! モーニング娘。の」

 「Teacher Teacher」はAKB48、「What is Love?」はTWICE、「UFO」は言わずもがなピンク・レディーの名曲だ。地下アイドル現場に通うオタクならば知っていて当然の、“地上の”アイドルたちの有名楽曲をテンポよく発言していく姿に、クスリと来てしまう。

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