大森南朋演じる柚木は大門未知子に通ずる? 『サイン』テレ朝医療ものに新たなスパイス

『サイン』テレ朝医療ものに新たなスパイス

 それからもう一つ、新人法医学者の中園景(飯豊まりえ)の存在も特徴的だ。最初こそ柚木と反発し合っていたが、徐々に信頼が生まれ、今ではすっかり相棒として行動を共にするようになっている。男女バディ物は、どうしても恋愛要素が盛り込まれる傾向が多くみられるが、今のところ柚木と景の間にその気配はない。そうした余計な要素がないおかげで、物語がテンポよくスピード感を持って展開しているともいえよう。

 脚本家にも注目したい。脚本スタッフとしてクレジットされているのは、羽原大介と香坂隆史の二人で、羽原はこれまでも様々な脚本を手掛けてきたが、中でも印象に残っているのが、2012年に放送された西島秀俊・香川照之W主演のドラマ『ダブルフェイス』(TBS・WOWOW共同制作)だ。この作品は、2002年公開の香港映画『インファナル・アフェア』をモチーフにしており、原作映画へのオマージュを感じさせる作りで「東京ドラマアウォード2013」単発ドラマ部門のグランプリに輝くなど評判を呼んだ。

 『サイン』の原作である韓国ドラマは全20話で、日本の通常の連続ドラマに比べてボリュームがある。原作から様々な要素やエピソードを削り、コンパクトでありながら物語の重厚さを損なわずにまとめ上げられたストーリー構成は、羽原の手腕に因るところが大きい。また、香坂はこれまで先述の『ドクターX』や『刑事7人』『緊急取調室』など、テレビ朝日の人気ドラマでその手腕を発揮している。テレ朝ドラマらしい骨太な安定感はまさにお手の物だろう。こうした強力な脚本陣だからこそ、テレ朝ドラマの王道パターンを踏襲しながらも、法医学ドラマとしてこれまでにない魅力を持った作品になっているのではないだろうか。

 第7話では、第1話で謎を多く残したままとなっていた、国民的人気歌手・北見永士(横山涼)の死亡事件が再び動き出す。北見の死に不審を抱いていた柚木は今度こそ真相を明らかにしようとするのだが、果たしてどのような展開が待ち受けているのか。これからますますこのドラマから目が離せなくなりそうだ。

■久田絢子
フリーライター。新聞ライター兼編集(舞台担当)→俳優マネージャー→劇場広報→能楽関連お手伝い、と舞台業界を渡り歩き現在に至る。ウェブ「エンタメ特化型情報メディアSPICE」等で舞台・音楽などのエンタメ関連記事を中心に執筆中。

■放送情報
木曜ドラマ『サイン―法医学者 柚木貴志の事件―』
テレビ朝日系列にて、毎週木曜21:00~21:54放送
原作:『サイン』(c)SBS/脚本:キム・ウニ、チャン・ハンジュン
脚本:羽原大介、香坂隆史
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:飯田爽(テレビ朝日)、下山潤(トータルメディアコミュニケーション)
演出:七高剛、山本大輔(アズバーズ)
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/sign/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる