黒羽麻璃央、荒牧慶彦ら舞台俳優がTVで真価を発揮 『サクセス荘』本番一発勝負に挑む10人の猛者

『サクセス荘』本番一発勝負に挑む10人の猛者

 と言うのも、一般的に連ドラは数回のテストを経て本番となる。しかし、今作はリハーサル1回のみ。そして、本番でのNGは一切許されない。カメラが回ったが最後。何があっても止めることなくラストまで演じ切らなければいけないのだ。

 ミスができないというのは、演者にとって相当メンタルを削られる条件だ。ところが、彼らはそうではない。先日、縁あって撮影の現場を見学させていただいたのだが、もちろん一定の緊張感はあるものの、本番が始まってしまえば実に伸びやか。入念な準備もやり直しもできないハードな環境を楽しむぐらいの余裕で、ノンストップの撮影をこなしていた。

 その強心臓と柔軟性を支えるのは、豊富な舞台経験。彼らは短い公演では1週間程度、長ければ2~3ヶ月に及ぶ間、ほぼ毎日のように舞台に立ち続ける。たとえ台本は同じでも、1回として同じ芝居がないのが舞台の世界。幕が上がれば、何かしら想定外のことは起こり得る。見た目は爽やかでスマートなイマドキのイケメンだが、中身はそんなイレギュラーの事態を幾度も切り抜けてきた百戦錬磨の猛者たち。舞台という芸能の原点と言える場所で芸を磨き続けてきた骨太な俳優たちだからこそ、「本番一発勝負」というリスキーな企画をなし遂げることができるのだ。

 ちなみに作品の内容は「サクセス荘」というアパートを舞台とした、夢見る若者たちの日常劇。感覚的にはかつてカルト的な人気を得た『やっぱり猫が好き』(フジテレビ系)に近いかもしれない。取るに足らない世間話を繰り広げたり、悪ふざけがエスカレートしておかしな事態に発展したり。軽妙な会話の応酬をゆる~く楽しむことができる作品になっている。

 映像/舞台と殊更に線を引く必要はないが、まだまだ劇場という場所は多くの人にとって縁遠いもの。しかし、そこには生でしか感じられないエンターテインメントがあり、テレビや映画だけでは発見することのできない実力者たちが揃っている。2000年代に静かなブームを起こした『演技者。』(フジテレビ系)など舞台とテレビが連動した企画はこれまでにもあったが、近年は久しく途絶えていた。演劇の一端を知るという意味でもこの「テレビ演劇」は有意義な企画。ぜひ新しいエンタメの扉を開いてみてほしい。

■横川良明
ライター。1983年生まれ。映像・演劇を問わずエンターテイメントを中心に広く取材・執筆。初の男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が1/30より発売。Twitter:@fudge_2002

■放送情報
木ドラ25『テレビ演劇 サクセス荘』
テレビ東京ほかにて7月11日スタート 毎週(木)深夜1時~1時30分
※各局によって放送日時は異なる
出演:和田雅成 高橋健介 高野洸 高木俊 黒羽麻璃央
   有澤樟太郎 荒牧慶彦 定本楓馬 玉城裕規 寺山武志 ※劇中部屋番号順
ナレーション:山寺宏一
原案・プロデュース:松田誠(ネルケプランニング)
脚本:徳尾浩司
監督:川尻恵太(SUGARBOY)
主題歌:川尻恵太(SUGARBOY)「今日もきっとサクセス荘」
チーフプロデューサー:大和健太郎(テレビ東京)
プロデューサー:和田慎之介(テレビ東京)、漆間宏一(テレビ東京)、中川亜佐子(テレビ東京)
        芦田政和(ジャンプコーポレーション)、沢口恵美(ジャンプコーポレーション)
制作:テレビ東京 / ジャンプコーポレーション
製作著作:「テレビ演劇 サクセス荘」 製作委員会
(c)「テレビ演劇 サクセス荘」 製作委員会
公式HP:https://www.tv-tokyo.co.jp/success_sou/
公式Twitter:@tx_success_sou

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