新海誠監督作『天気の子』は“雨”の表現に注目! 新旧アニメーションから“水”表現の変遷を紐解く

新旧アニメーションから“水”表現の変遷を紐解く

 『海獣の子供』、『きみと、波にのれたら』、そして『天気の子』。2019年夏の、これらの劇場アニメーション作品に共通点を見出すとすれば、“水”が重要な要素になっているという点であろう。

『きみと、波にのれたら』(c)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会

 絶えず動き続ける水面や、舞い落ちる水滴など、アニメーションで繊細な動きを見せる水を表現するのは、非常に難しい技術だ。しかし、それだけにその千変万化する姿は魅惑的であり、アニメーターの腕の見せどころともいえる。ここでは、劇場アニメーション作品における水の表現を、新旧の作品を交えながら振り返りつつ、それが物語るものを考えていきたい。

『アナと雪の女王』

 最先端であり続けることを目指すディズニーの劇場長編における映像表現では、誰も見たことのないものを見せなければならない。たとえば『アナと雪の女王』(2013年)では、かつてない雪のリアルな表現を達成するため、いちから独自にCGソフトの開発を行っている。

 従来のように観客の目に見えるところだけでなく、コンピューターによって設定された空間の中に、火、雪、水、風などのエフェクトをシミュレーションすることで、擬似的な現実を作り出してしまう。このような技術を自社で開発するたびに、ディズニーのCG技術のストックが増えていき、表現の幅は広がってゆく。

 『モアナと伝説の海』(2016年)で新しく開発されたのは、「スプラッシュ」と名付けられた計算ソフトだ。水の粒子は雪よりもはるかに細かく流動的である。そのため、雪を表現したレベルのリアルさで、海の膨大な水量が荒れるような場面を表現するためには、億単位の水の粒子をシミュレーションする必要があるという。リアルタイムで絶えず動き続ける数億の粒子……現在の技術でこれを計算するためには、複数のコンピューターを同時に稼働させ、仕事を分担させるという方法をとらなければならない。

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