『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』はなぜ最高なのか アニメシリーズを支えてきた製作者たちの覚悟

原作より“圧”を増したテンションの高さ

 このように、挙げていけばきりがないほどに、アニメ『黄金の風』にはスタッフ陣の熟練の業が詰め込まれている。2012年のアニメ第1部から、今年で早7年。ほぼ同じ座組みで制作され続けているからこその、精度の高さ。互いの呼吸を読み合うような、針に糸を通すように結実するクオリティは、キャラクターを演じるキャスト陣にも確実に伝播していることだろう。

 原作においては、画が芸術の域を極めたためかやや難解な性格すらあったが、アニメではそれが当然のようにカラーの映像に変換される。スタッフが穴が開くほどに原作コミックを読み込んだであろうことは想像に難くないが、その結果、スタンド能力の演出や意図がとても分かりやすく表現されている。しっかりと整理されているからこそ、とても飲み込みやすいのだ。

 しかしそれは、決して、原作の密度が下がったことを意味しているのではない。実際のイタリアロケの資料を元に描かれた情景や、キャスト陣の魂が込められた熱演、何より、演出と色彩のテンションの高さは、むしろ原作よりいくらか圧を増している。一介のジョジョファンとして、このような映像が毎週のように観られることに、ただただ敬意を表するのみである。

 原作者・荒木飛呂彦が込めた、その時点での、あらゆる「ジョジョ」の集大成。善と悪のふたつの要素を兼ね備えた主人公は、まるで旅行記のようにイタリアを駆け巡り、進むべき道を切り開く。アニメにおいても、長年シリーズに携わってきたスタッフが、これまた集大成かのように、その洗練された技巧を全力で注ぎ込む。

 津田尚克総監督のもと、作中のキャラクターたちも、スタッフらも、「正しいと信じる」やり方を邁進する。大事なのは「結果」そのものではなく、そこに「向かおうとする意志」。その熾烈な生き様や「良いアニメを作ろう」というベクトルに迷いが見られないからこそ、多くの視聴者の胸を打つのである。

 物語は、第3部からのゲストキャラクター・ポルナレフが登場し、彼のスタンドがレクイエムに到達。登場人物たちの魂が入れ替わり、キャストらの演技合戦も加熱。ますます、見どころだらけの展開を見せている。

 登場人物たちは、それが善であれ悪であれ、「正しい」と思ったことをやり抜こうとする。プライドにかけて、時に命に替えてでも。その真っすぐな姿は、漠然と日常生活を送る我々に気づきを与えてくれるような、そんな魅力に満ちているのだ。終わりのないのが「終わり」……などと言ってしまいたいところだが、確実にアニメ『黄金の風』は終わりに近付いている。我々にできるのは、その覚悟の交錯を、固唾を飲んで見守るのみである。

■結騎了
映画・特撮好きのブロガー。『別冊映画秘宝 特撮秘宝』『週刊はてなブログ』等に寄稿。
ブログ:『ジゴワットレポート』Twitter

■放送情報
『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』
TOKYO MX 毎週金曜 25:05〜
毎日放送 毎週金曜 26:55〜
BS11 毎週金曜 25:30〜
AbemaTV 毎週日曜 24:00~
アニマックス 毎週日曜 19:00~
原作: 荒木飛呂彦(集英社ジャンプ コミックス刊)
総監督:津田尚克/監督:木村泰大・髙橋秀弥 
シリーズ構成:小林靖子/キャラクターデザイン:岸田隆宏/総作画監督:石本峻一
スタンドデザイン・アクションディレクター:片山貴仁/プロップデザイン:宝谷幸稔
美術設定:滝れーき・長澤順子・青木薫/色彩設計:佐藤裕子 
撮影監督:山田和弘/編集: 廣瀬清志/音響監督:岩浪美和/音楽: 菅野祐悟
アニメーション制作:david production
ジョルノ・ジョバァーナ:小野賢章
ブローノ・ブチャラティ:中村悠一
レオーネ・アバッキオ:諏訪部順一
グイード・ミスタ:鳥海浩輔
ナランチャ・ギルガ:山下大輝
パンナコッタ・フーゴ:榎木淳弥
トリッシュ・ウナ:千本木彩花
ボス:小西克幸
(c)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社・ジョジョの奇妙な冒険GW製作委員会
公式サイト:http://jojo-animation.com/

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