『ラジエーションハウス』、『HERO』鈴木雅之監督の手腕と個性の強い登場人物で新たな「月9」に
既存のドラマではあまり扱われていなかった職業にフォーカスを当てた点や、ひとつの空間に集う個性の強い人物たちの群像性。シリアスさを持ったストーリーの中で、各登場人物の掛け合いによってコミカルさが際立つテレビドラマとしての観やすさ。本作の見せ方の下敷きにあるのは、間違いなく木村拓哉が主演を務めた『HERO』であろう。一般の視聴者には漠然と「違う」ということしか理解できない“技師”と“医師”の違いは検察官と事務官のそれに通じるものがあり、また物語の舞台となる甘春総合病院の“ラジエーションハウス”の扉やエレベーターを象徴的に映し出す空間の作り方。ひいては鈴木監督らしい表情に寄ったコミカルなカットで、ますますその印象を強くしていく。
そして極めつきは、最終回で窪田正孝演じる五十嵐がアメリカに旅立つのをメインキャスト全員が横並びで見送るその姿。言うなればヒット作のテンプレートに当てはめたに過ぎないという否定的な見方もすることはできるが、法曹を扱った『HERO』から医療を扱った『ラジエーションハウス』へと畑を変えてここまでしっくりとはめ込むことは決して容易ではない。何よりもその演出のおかげで五十嵐の少し風変わりな部分をはじめ各登場人物のキャラクター性がしっかりと引き立てられ、また淡い恋愛要素の一端を感じさせた五十嵐と杏(本田翼)との関係の収束点も綺麗に、のびしろを持たせた状態でまとめられる(いや、これもまた『HERO』の久利生と雨宮と言ってもいいかもしれない)。
そんな最終回の展開に、SNSなどを中心に困惑する声も多々見受けられたが、このドラマが『HERO』と同じ系譜上にあるならば正しい選択であったといえるだろう。さっそく24日に連続ドラマの後日談となる2時間SPの特別編が放送される。唯織がアメリカへ向かう機内の中で、第1話に登場した写真家・菊島(イッセー尾形)と再会し、そこで急病人を救う唯織の姿と、同時進行でラジエーションハウスの人々の物語も展開していくとのことだ。『コード・ブルー』と『HERO』の後を継ぐ作品として、今後続編や映画版が作られる可能性を充分に秘めたストーリー展開が、「特別編」では繰り広げられるのではないだろうか。
■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter
■放送情報
『ラジエーションハウス特別編~旅立ち~』
フジテレビ系にて、6月24日(月)21:00~22:48放送
出演:窪田正孝、本田翼、広瀬アリス、浜野謙太、丸山智己、矢野聖人、山口紗弥加、遠藤憲一、鈴木伸之、浅野和之、和久井映見ほか
原作:『ラジエーションハウス』(原作:横幕智裕、漫画:モリタイシ、GJ/集英社)
脚本:大北はるか
プロデュース:中野利幸
演出:鈴木雅之
制作著作:フジテレビジョン
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/radiationhouse/