吉高由里子のユルい雰囲気がもたらす効用 『わたし、定時で帰ります。』福永の心は開放できるか
新潟県を中心とした大地震で最終話が中断した『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)が今夜、改めて放送される。
Web制作会社・ネットヒーローズを舞台にした本作は、「働き方改革」が叫ばれ、労働環境の改善が求められる時代に相応しい会社モノのドラマだ。物語は吉高由里子が演じる32歳のディレクター・東山結衣を中心とした群像劇。毎話、社員の一人に焦点を当てることで、今の日本の職場で起こっている様々な諸問題を取り上げている。
始まる前はライトなタイトルと、トリスハイボール(サントリー)のCMでおどけた姿を見せる吉高が主演ということもあってか、定時で帰る結衣が仕事の後でダラダラと飲み歩くようなユルい話、さながら60年代に植木等が主演を務めた『無責任』シリーズの女版とでも言うような、スチャラカ女子社員のコメディドラマになるかと想像していたが、実際は真逆で「定時に帰る」と気軽に言うことすらはばかられる、日本社会の厳しい現実をこれでもかと見せる辛辣な作品だった。
シリアスな内容ゆえにSNSでの感想も毎話終わるごとに阿鼻叫喚の嵐。自分の職場と比較して考える人が多かったようだが、恐いもの見たさも含めて、一番押してほしいツボを的確に捉えたのだろう。視聴者が一番不安なのは、恋愛でも家庭でもなく仕事なのだと本作を見て改めて感じた。
本作は会社を舞台に、社会で起きている諸問題を描いている。
第2話では産休・育休開けのワーキングマザーの苦悩が描かれ、第5話では派遣デザイナーが取引先のスポーツ関連会社の男性社員たちから派遣という弱い立場を狙ったセクハラに遭遇する場面が描かれた。働き方改革を推進する理想と、利益を出さないと生き残れないという本音の衝突から生まれた軋みが、弱い立場である女性たちへと向かう様を容赦なく描き出していた。
そんな、年齢も立場も性別もバラバラの人たちが入り交じる職場の中で“ゆるさ”を武器に、社員一人一人に寄り添い支えたのが、吉高が演じる東山結衣である。