吉高由里子のユルい雰囲気がもたらす効用 『わたし、定時で帰ります。』福永の心は開放できるか

『わた定』結衣は福永の心を開放できる?

 第9話。超過労働に疲弊して引きこもりとなった種田晃太郎(向井理)の弟・柊(桜田通)は、家に遊びに来た(当時、晃太郎の恋人だった)結衣が、二日酔いで会社をズル休みした時の姿を思い出したことで「力が抜けてバカバカしくなって」自殺を留まれたと語る。このシーンは吉高のユルい雰囲気がもたらす効用を、的確に解説している。

 先週、途中で中断した最終話では、諸悪の根源と言える部長の福永清次(ユースケ・サンタマリア)が結衣に心情を吐露する場面が描かれた。

 48歳の福永は、バブル崩壊後の社会に出た就職氷河期世代(団塊ジュニア)の走りだ。「取引先が福永を外せ」と言ってきたことを結衣が伝えると、福永の口から呪詛にも似た恨み言が溢れ出す。ユースケの怪演もあってか不気味な迫力が漲っていたが、同時に母親に甘える子どものようにも思えた。

 社員たちの悩みを受け止めてきた結衣だが、福永の心は開放できたのだろうか? 結衣のユルさが、福永にとっても救いとなればいいのだが。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』
TBS系にて、毎週火曜22:00~放送
原作:朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』シリーズ(新潮社刊)
出演:吉高由里子、向井理、中丸雄一、柄本時生、泉澤祐希、シシド・カフカ、内田有紀、ユースケ・サンタマリアほか
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
演出:金子文紀、竹村謙太郎
プロデューサー:新井順子、八尾香澄
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/watatei/

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