『なつぞら』内村光良は“語りかけ”のスタイル 今期ドラマにみる「参加するナレーション」の進化
近年、ドラマのナレーション(語り)に注目が集まることが増えたように思う。新しい作品が発表されると、主演は誰か、脚本は誰かといったことはもちろん、誰がナレーションかもまた話題になるようになってきた。
特に今期のドラマでは、ナレーションでの創意工夫が目立つ印象だ。ここではそのなかからいくつかの作品をピックアップし、それぞれのナレーションの魅力、そしてそこに見えるナレーションの果たす役割の変化について書いてみたい。
元々ドラマのナレーションは、映像を補足するためのものという側面が強かった。たとえば、ドラマのなかの複雑な人間関係や難しい言葉の説明などである。最近で言うと、企業を舞台にした経済ドラマが典型的だ。
このジャンルを得意にしているのがTBSの日曜劇場、いわゆる「日9」である。いずれも池井戸潤原作で、平成のドラマ最高視聴率を記録した『半沢直樹』やシリーズ化もされた『下町ロケット』など、すぐにそうした作品の例が思い浮かぶ。
この二作のナレーションを務めたのは、『半沢直樹』が山根基世で『下町ロケット』が松平定知。ともに元NHKのアナウンサーで、いわばナレーションを専門にしてきたプロだ。当然ながら、その語りには長年培ってきた高い技術に裏付けられた抜群の安定感がある。ただ立ち位置としてはあくまで物語に寄り添い、そこから外れることはない。
今期の『集団左遷!!』もまた、経済ドラマだ。福山雅治演じる銀行員が、行内の権力争いなどに巻き込まれ、追い詰められながらも部下の行員とともに奮闘する「日9」ではおなじみの企業ものである。
そして今回、ナレーションには貫地谷しほりが起用された。やはり目を引くのは、アナウンサーではなく俳優が務める点だろう。確かに貫地谷は、ドキュメンタリー『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)などですでにナレーションの実績がある。しかし、こちらはドラマだ。
つまり、俳優があくまでナレーターとしてドラマに関わる。そこがポイントだろう。貫地谷しほり本人も、「熱のこもった出演者に負けないよう、こちらも“当てていく”というような感じ」を意識してナレーションに臨んだことを語っている(番組公式サイトより)。この「当てていく」という表現からは、貫地谷もまた「演じて」いたことがうかがえる。ただ寄り添うのではなく、自分もドラマに参加するスタンスと言ったらよいだろうか。