『インハンド』山下智久が訴えかける“生命への信頼” サイエンスものに収まらない人間ドラマに

『インハンド』山下智久が表現するのは生命への信頼?

 山下智久が天才科学者を演じる金曜ドラマ『インハンド』(TBS系)。原因不明の疾患や集団感染に科学の力で立ち向かういわゆる「サイエンスもの」だが、奥行きのある人間ドラマが視聴者をひきつけている。

 山下演じる紐倉哲は天才寄生虫学者。というと世捨て人めいた「変人」のイメージが思い浮かぶが、右手がロボットハンドで、廃園になった植物園で研究に打ち込む異形の寄生虫学者を生き生きと演じている。紐倉とコンビを組む医師の高家春馬を濱田岳、2人に調査を依頼する内閣官房サイエンス・メディカル(SM)対策室のキャリア官僚・牧野巴を菜々緒が演じており、この3人が中心となって難事件を解決していく。

 なんといっても主演の山下智久の存在が大きい。俳優として20年以上のキャリアを持つ山下だが、近年は振れ幅の大きい演技で話題をさらってきた。『アルジャーノンに花束を』(2015年・TBS系)で6歳児の知能をもつ主人公、『5→9〜私に恋したお坊さん〜』(2015年・フジテレビ系)で東大卒のエリート僧侶に扮したことをはじめ、『ボク、運命の人です。』(2017年・日本テレビ系)では未来から来た謎の男を演じるなど、シリアスからラブコメまで、その臨機応変ぶりには圧倒される。『インハンド』の紐倉はクールさの中に時折りのぞく熱さのコントラストが印象的だが、エッジの効いた役柄を自然体で乗りこなしている。

 そんな山下を支える濱田岳や菜々緒とのかけ合いも見どころのひとつ。最先端の知を武器にする科学者(紐倉)と、命を救うことを使命とする医師(高家)、医療と社会の問題を取り扱うキャリア官僚(牧野)という組み合わせは問題解決のための理想的なトライアングルであり、原作者の工夫と意図を感じさせる。紐倉と高家の関係はさながらホームズとワトソンで、古典的なバディものを踏襲しているが、2人に絡む菜々緒の、悪女キャラとはひと味違う自然体の演技が新鮮だ。

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