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『なつぞら』広瀬すずは“かぐや姫”のよう 2つの家族と夢に、なつはどう向き合う?

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 第1話、「ヒロインが序盤に水に飛び込む」という朝ドラのお約束に従うかのように、なつ(粟野咲莉/広瀬すず)は、命がけでアニメーションの「水」の中に飛び込んだ。彼女の夢となり、彼女の未来を彩っていくことになる「アニメーション」の画面の中に、そして、戦争によって家族と引き離された、暗く悲しい過去の記憶の中に、彼女は手を引かれるがまま、一息に飛び込むのである。

 記念すべき100本目の朝ドラ『なつぞら』(NHK総合)から目が離せない。おおらかで優しい登場人物たちと大自然に抱かれるように育ったヒロインが何かに憧れ、夢を叶えるために上京する。登場人物全員が悪気のない人たちで、損得勘定なしに誰かのために生きている。そんな「誰が観ても楽しい」朝ドラの王道を踏襲するようでいて、単純には言い表せない複雑な感情と人間模様が見え隠れする事がなにより面白い。

 特に、初回冒頭の場面に物語が追いついた25話以降、それは更に加速している。タップダンスを得意とする兄・咲太郎(岡田将生)のステップの音と共に東京編の幕を開けてしまったが最後、ただひたすらに温かかったはずの物語は、違う色を見せ始める。ヒロイン・なつはまるで、時が来たら月に帰らなければならない“かぐや姫”のように、「いつか戻らなきゃいけないような気がする」場所・東京の引力に今にも吸い込まれそうだ。

 前述した水に飛び込む初回の一場面が彼女の人生を大きく揺るがした最初の出来事であるなら、次の大きな転換点は、9話において、亡くなった父親が戦地で描いた家族の似顔絵を元に、なつが想像で描き出した、アニメーションの真昼の夢の場面である。天陽(荒井雄斗/吉沢亮)が死んだ馬を描き続けることでその孤独を埋めているように、彼女もまた、今はもうない、絵の中の幸せな家族の光景にそっと息を吹き込む。その幻の光景は、映画『お引越し』において、もう元には戻らない父母との幸せな記憶を、祭りと湖上に燃える船という風景を通して幻視することで、かつての自分と決別し成長するヒロイン・田畑智子を相米慎二が描いたことと重なる。

 つまり、なつは、決してこの先叶うことのない、家族で行く祭りの夢を見ることによって、封じ込めてきた家族への思いと向き合い、それが失われたことに対するやり場のない怒りを泰樹(草刈正雄)にぶつけることで本当の家族への思いに一度折り合いをつける。そして、泰樹をはじめとする柴田家の家族と共に生きるという新しい幸せを見つけていくことになるのである。

 さて、なつが高校演劇でヒロインを熱演した「白蛇伝説」。農協と泰樹の不仲問題を題材に「個人と集団」を描いたと演劇部顧問の倉田(柄本佑)は言う。だが、泰樹がすぐにそれを察し落ち込んでしまうことが意外なほど、事実との関連性は極めて薄かった。しかし、この物語は30話に差し掛かった現在、妙な現実味を帯び始めている。

      

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