『わたし、定時で帰ります。』ネット上で阿鼻叫喚の嵐! ドラマで描かれる“働き方”の変化
『ショムニ』(フジテレビ系)や『ハケンの品格』(日本テレビ系)のようなドラマも例外的に存在したが、そこで描かれる主人公は、何でもこなすことができるスーパーヒロインで、現実に働く女性を描いているとは言いがたかった。
『女王の教室』、『家政婦のミタ』(日本テレビ系)といった遊川和彦脚本のドラマに登場するヒロインが象徴的だが、深読みするならば、女性がロボットのように働かないと問題を処理できないくらい、社会が複雑化してしまったということなのだろう。
それが2010年代に入ると、新しい会社ドラマが増えてくる。大きかったのは『半沢直樹』(TBS系)以降の日曜劇場の企業ドラマ路線のヒットだろう。中小企業が、少数精鋭ながらも優れた技術力を武器にして生き残りをかけて大企業に闘いを挑む姿を描いた日曜劇場は中年男性を中心に絶大な指示を受けている。
現在放送中の銀行を舞台にした『集団左遷!!』(TBS系)もこの路線の作品なのだが、面白いのは『わた定』とは真逆の労働観を打ち出していること。劇中では、銀行の再編成のために一年後に廃店となることがすでに決まっている三友銀行の支店長となった片岡洋(福山雅治)が、ただ流されるのではなく「がんばりたい!」「ちゃんと仕事がしたい」と部下たちに訴える。これは『わた定』の結衣とは真逆の労働観で、むしろ、定時に帰る副支店長の真山徹(香川照之)の方が悪役として描かれている。
この二作がTBS系で同じクールに放送されているのは面白い現象だが、それだけ年齢によって労働に対する考え方がバラバラだということだろう。