『わたし、定時で帰ります。』ネット上で阿鼻叫喚の嵐! ドラマで描かれる“働き方”の変化

『わたし定時』ネット上で阿鼻叫喚の嵐!

 『わた定』もそうだが、こういった世代による労働観の違いによって起きる混乱を捉えた作品が、近年は面白い仕上がりとなっている。代表作は宮藤官九郎脚本の『ゆとりですがなにか』(以下、『ゆとり』)と野木亜紀子脚本の『獣になれない私たち』(以下、『けもなれ』)だろう。

 どちらも日本テレビ系で水田伸生がチーフ演出を務めた作品だが、『わた定』も含めたこの三作は、主人公の年齢が近い。

 『ゆとり』の主人公・坂間正和(岡田将生)は1987年生まれの29歳(放送当時の2016年)。『わた定』の結衣とは、同世代だと言える。87年生まれはゆとり第一世代と呼ばれた世代だが、2009年のリーマンショック以降の就職氷河期の中で、なんとか就職活動をして会社に潜り込んだ世代だ。

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『ゆとりですがなにか』(c)日本テレビ

 『けもなれ』の深海晶も(2018年の放送時点で)30歳だから、就職氷河期を体験している世代だと言えるだろう。晶は派遣社員として働いた末に、IT企業に正社員として採用された。しかし社長は恫喝ばかりするパワハラ男、逆に部下の新人社員は自分勝手で傷つきやすく、すぐに無断欠勤をする。労働観の違う先輩と後輩に挟まれた晶は、次第に心が疲弊していく。

『獣になれない私たち』(c)日本テレビ

 おそらく、働き方改革のしわ寄せを一番受けているのが「ゆとり第一世代」なのだろう。

 70年生まれの宮藤と74年生まれの野木は、バブル崩壊後に社会に出た第一次就職氷河期世代に当たるのだが、自分たちの世代が体験した就職氷河期の苦労と重ねることで、現在30代前半となるこの世代の苦悩を引き上げている。

 最終的に『ゆとり』と『けもなれ』は、ゆとり第一世代の主人公が会社を去ることになったが、『わた定』の結衣は、上の世代と下の世代の架け橋となれるのか? どうにも先行きは不穏である。

『わたし、定時で帰ります。』(c)TBS

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』(c)TBS
TBS系にて毎週(火)22:00~放送
原作:朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』シリーズ(新潮社刊)
出演:吉高由里子、向井理、中丸雄一、柄本時生、泉澤祐希、シシド・カフカ、内田有紀、ユースケ・サンタマリアほか
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
演出:金子文紀、竹村謙太郎
プロデューサー:新井順子、八尾香澄
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/watatei/

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