今期、もっとも観るべきドラマは? ドラマ評論家が選ぶ、2019年の春ドラマ注目作ベスト5

2019年の春ドラマ注目作ベスト5

 2019年4月クールのドラマが出揃った。最大10連休というこのゴールデンウィークを利用して第1話から見ていた方も多いのではないだろうか。現在は、TVerやFOD、Huluをはじめとするサービスが充実しており、話題作はどんなタイミングからでも1話から観始めることができる。各局、力の入った作品が並ぶが、本当に観るべきドラマとは。ドラマ評論家の成馬零一氏に、春ドラマから注目すべきタイトルのベスト5を選んでもらった。

1.腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。(NHK)

『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』(提供=NHK)

 1位の『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』はNHKのよるドラ枠で放送されているゲイの高校生が主人公の青春ドラマ。

 男性同士のラブシーンから物語がはじまり、BL(ボーイズラブ)を愛好する腐女子のライフスタイルを容赦なく描く一方で、ゲイでありながら普通の幸せを求めるあまり、(ゲイであることを隠して)異性と付き合ってしまう主人公・純(金子大地)の弱さをしっかりと見せるストーリーの掘り下げは一筋縄ではいかない。

 前作『ゾンビが来たから人生見つめ直した件』(以下、『ゾンみつ』)に続くNHKならではの攻めたドラマだが、SNS受けを狙ったタイトル、そして『ボヘミアン・ラプソディ』がヒットした後で、クイーンの楽曲を重要なアイテムとして使用してしまうこと(クイーン自体は映画が公開される前に書かれた原作小説『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』(KADOKAWA)にすでに登場している)に、あざとさを感じて避けている人もいるかもしれないが、キャッチーな仕掛けの中心にあるのは、ボーイ・ミーツ・ガールの青春ドラマで、思春期の不安と甘酸っぱさがしっかりと描かれている。

 このあたり、脚本を担当した三浦直之ならではだろう。劇団ロロでの活躍はもちろんのこと、昨年手がけたインスタグラムで配信されたドラマ『それでも告白するみどりちゃん』が素晴らしく、いつかテレビで連ドラもやってほしいと思っていたため、今回のNHKドラマ執筆は嬉しい。先入観を捨てるのは難しいかもしれないが、時間に余裕のある人は一度見てほしい。すごく大事なことを描いている。

2.きのう何食べた?(テレビ東京系)

『きのう何食べた?』(c)テレビ東京

 2位の『きのう何食べた?』は、よしながふみの原作漫画を作り手が作品の良さをしっかりと理解した上で、2019年現在に描かれるべきドラマに仕上げている。

 40代のゲイのカップルの日常を食事を通して描いた作品で、グルメドラマとしても秀逸。脚本は昨年『透明なゆりかご』(NHK)が高い評価を受けた安達奈緒子。出世作、『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)でもBLテイストを持ち込んでいた安達の作風はよしなが作品と予想以上に相性がいい。何より面白いのは、両親や友人がゲイの主人公たちに見せる視線を丁寧に拾っており、その気まずさが、ドラマのスパイスとなっている。

 上位二作はゲイの男性を主人公にしたもの。他にも『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)などLGBTQをモチーフにしたドラマが少しずつ増えているのだが、同時に近年のドラマの主戦場として盛り上がりつつあるのが会社を舞台にしたドラマだ。

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