泉澤祐希、『わたし、定時で帰ります。』でも「ベテラン」感を発揮 現代の若者役で新たな扉を開く

泉澤祐希、『わたし、定時で帰ります。』でも「ベテラン」感を発揮 現代の若者役で新たな扉を開く

 演技スタート時から高く評価されてきた「泣き」の演技は、今も求められることが多い。しかし、それに加えて、実はちょっと嫌味を言ったり文句を言ったりする“小物”ぶりや、憎たらしい役も上手いということは、この『オモコー』や、『仰げば尊し』(TBS系)のライバル校の悪役ぶりからの「発見」だった。

 さらに朝ドラ『ひよっこ』の三男は、そのいいヤツぶりが、茶の間から愛されたが、いかんせん「昭和」感がハマりすぎて、芝居が達者であまりにナチュラルであるために、作品に完全に溶け込んでいて、いわゆる「朝ドラブレイク俳優」状態にはならなかった。

 豊かな表情と、上ずらせたり詰まらせたり裏返したりする繊細な「声」の表現は実に達者だが、実は個人的に勝手に心配していたのは、彼の柴犬的な童顔ぶりと「昭和」感であった。

 ノスタルジックな空気・佇まいはNHKなどの「昭和モノ」「戦争モノ」「歴史モノ」などにしっくりハマり、芝居の巧さから悲劇的な役で重宝される。そこは若手俳優の中では彼の独擅場といって良いだろう。

 しかし、今も普通に高校生役を演じられる童顔具合もあって、現代劇や大人の役にどのように活躍の場を広げ、シフトチェンジしていくかは気になるところだった。

『アンナチュラル』第5話より(c)TBS

 そこで次のステージへの進化を見せてくれたのが、ゲスト出演として、耳が聴こえないろうあ者の夫婦の難役を演じた『コウノドリ』(TBS系)だ。何もできない自分の無力さに対する苛立ち・焦りをにじませつつも、ふとした時に見せる安堵の表情には、穏やかな「父性」が感じられた。また、同じくゲスト出演した『アンナチュラル』(TBS系)では、溺死した妻の解剖を依頼する夫役をナイーブに演じた。愛する妻の命を奪った女を刺す最後の場面では、湧きおこる憎悪の感情が視聴者の胸を鋭く突き、息苦しさすら与えたのだった。

 そして、今回『わたし、定時で帰ります。』で演じているのは、いかにも現代的な感覚の新入社員役。4月30日放送分では、彼が面白半分で撮影した動画が大変なトラブルを引き起こすことになる。

 彼がすでに確固たる地位を確立している、昭和モノでも戦争モノでもなく、哀愁もノスタルジーも悲劇もない、現代の若者役をどう演じるか。おそらくまた新たな扉を開く予感がする本作での表現が、実に楽しみだ。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』
TBS系にて毎週(火)22:00~放送
原作:朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』シリーズ(新潮社刊)
出演:吉高由里子、向井理、中丸雄一、柄本時生、泉澤祐希、シシド・カフカ、内田有紀、ユースケ・サンタマリアほか
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
演出:金子文紀、竹村謙太郎
プロデューサー:新井順子、八尾香澄
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/watatei/

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