『レゴ(R)ムービー2』“すべてはサイコー‼”では終わらない大人な後味 前作との繋がりを読み解く

『レゴ(R)ムービー2』前作との繋がりを読み解く

 そしてレックスは主人公エメットが憧れる男らしさ、大人らしさを体現した存在として登場する。ちなみに主人公エメットの声を当てているクリス・プラットはレックスの声も担当して演じ分けているのだが、レックスのマッチョなタフガイぶりは2014年の1作目以降、男らしい大作スターとして一気に大ブレイクしたプラット本人を投影したイジリでもある。なぜこの両キャラを同じ俳優が演じているのかという点にも注目してみてほしい。

 レックスはとある経験を通して人生の厳しさを知ってタフな男になっており、エメットにも自分のようになることを求めてくる。自分のような男が物事を解決できるのだと。

 しかしエメットも本作自体も、レックスの「厳しい現実や価値観の合わない奴は力づくでマッチョにぶっ飛ばせ」という考え方にはしっかりとNOを突き付け、ある答えを出す。その答えは終盤で歌われるある歌に詰め込まれている。

「すべてはサイコー!!じゃない。でもすべてがサイコーでなくてもいい。それにサイコー!!を目指すことはできる!」

 他者を100%理解することはできない。かつての理想をすべて実現することもできない。でも理想に近づけるためにお互いに努力していけば現実はより良くなっていく。

 主人公たちがそれに気づいて、その時点でのサイコーの落としどころを見つける結末は真の意味で大人な後味だ。子どもたちも、エメットの物語を通して完全に大人に変わりきる必要なんてないと学ぶことができるだろう。

 一作目で自由になんでも作れるレゴを人間の想像力の象徴として描いたのちに、その想像力は自分のためだけじゃなく他者のためにも使えるというメッセージをくれる、『レゴ(R)ムービー』は素晴らしいシリーズだ。

 そして本作のサイコーの見どころはエンドロール。本作を作ったクリエイターたちや演者を最大限に称えており、さらに、作中で提示していたように「他者と一緒に歩みよって想像力を働かせればこんな素敵なものができる」と実際の例を見せてくれる。

 子どもにも大人にも、現実にプラスのフィードバックをくれる必見の一作だ。

※真面目な話ばかりしてしまったが、続編だけにパロディギャグもパワーアップしている。個人的には平成が終わろうとしているこの時期に、平成元年に公開されたあの歴史的名作の爆笑パロディが見られたということがなんだか嬉しかった。ぜひ劇場で確認してください。

■シライシ
会社員との兼業ライター。1991年生まれ。CinemarcheやシネマズPLUSで執筆中。評判良ければ何でも見る派です。

■公開情報
『レゴ(R)ムービー2』
全国公開中
監督:マイク・ミッチェル
脚本:フィル・ロード、クリストファー・ミラー
声の出演【字/吹】:エメット&レックス・デンジャーベスト役:クリス・プラット/森川智之、ルーシー/ワイルドガール役:エリザベス・バンクス/沢城みゆき、バットマン役:ウィル・アーネット/山寺宏一
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2018 WARNER BROS. ENTERTAIMENT INC.
公式サイト:www.legomovie.jp

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる