『はじこい』深田恭子と横浜流星が教えてくれた“無敵な自分”になること すべてが愛おしい最終話に

『はじこい』すべてが愛おしい最終話

 しかし、大人になると“自分が好きな自分”を手放してでも、傷つくことを避けようとしてしまいがちだ。失ったとしても、またゼロに戻るだけ。致命傷を受けてマイナスになるよりは、マシだと言い聞かせて……。なぜなら、大人になるほど肉体と同じく、心の傷の治りが遅くなるのを実感しているから。“変な大人”だったはずの順子も、ユリユリとの恋を手放そうとした。それが、“普通の塾講師”がする大人の役目であると、自分を納得させながら。そしてユリユリもまた、東大に合格したからといって、「どうやって養っていくの?」という質問に、すぐさま答えられるほど大人になれたわけではないことを思い知る。

 “好き”だけで、すべてを手に入れられると信じられる無敵の時間は、永遠には続かない。しかし“好き”がなければ、何も手に入らない。いつの日か深く傷つくことを恐れて、今日の“好き”を諦めていたら、一生ゼロのままだ。0点がイヤならば、リスクを取ってでも点を取りにいくしかない。ピンクの服に身を包んで、東大の講義室に踏み込む順子は間違いなく“変な大人”だ。だが、その原動力はユリユリへの恋という、この上なくピュアなもの。自分の好きな自分に、素直に生きる勇気を振り絞るのは、いつだって今しかない。今より若い=“無敵に近い“日はないのだ。何歳になっても“変な大人”であり続けようではないか。誰かに「されたられた」と振り回されず、全部「自分のせい」にできるのが大人なのだから。

 ラストまで、ユリユリはまっすぐだったし、雅志はどこまでも雅志で、山下一真(中村倫也)も視聴者を魅了する食えない男だった。それぞれが順子を、そして彼女を好きになった自分を愛し、笑顔で自分の選択を受け入れていた。そんな姿を通じて、私たちもいつだって“無敵な時間”を生み出せるのだと教えてくれた。言うなれば、このドラマを好きになった自分を好きになれた。気づいたら恋をしていたような、そんな楽しい3カ月間だった。「ときめきってやつ? し放題で。うらやましいだろ?」と泣きながら笑う雅志のように、この思い出を大事に胸にしまって、また新たな“好き”を探しにいきたい。

(文=佐藤結衣)

■作品情報
火曜ドラマ『初めて恋をした日に読む話』TBS系
出演:深田恭子、永山絢斗、横浜流星、中村倫也、安達祐実、石丸謙二郎、鶴見辰吾、生瀬勝久、檀ふみ、高橋洋、皆川猿時
原作:『初めて恋をした日に読む話』持田あき(集英社『クッキー』連載)
脚本:吉澤智子
プロデューサー:有賀聡(ケイファクトリー)
演出:福田亮介ほか
製作:ケイファクトリー、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/hajikoi_tbs/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる