『岬の兄妹』片山慎三監督、デビュー作に込めた人間の生きる力 「観る人の心を動かす作品を」
「最初は『三崎の兄妹』と書いていた」
ーー撮影も素晴らしいです。良夫が自作したチラシを真理子がバラ撒いてしまうシーンは、桜の花びらのようで非常に幻想的でした。
片山:先程の話とも重なりますが、この物語をどこか寓話として位置づけていたこともあり、その象徴として、物語における緩急の緩として、あのシーンを挿入しました。
ーータイトルにも入っている「岬」もこの世界の寓話性を感じさせます。どの段階でタイトルは決定したのですか。
片山:三浦半島の三崎港で撮影を行ったので、最初は「三崎の兄妹」と書いていたんです。この字をPCで作業しているときに変換ボタンを押したら「岬」が出たので、こっちのほうがいいなと。本当は、『デメニギスの夜』というタイトルにしたかったんです。でも、スタッフ全員に断れました(笑)。
ーー確かにそれだとより観客を選んでしまう感じがします(笑)。ポン・ジュノ監督、山下敦弘監督の助監督を経て、本作が長編監督デビュー作となったわけですが、やはり監督としての決断の重さはありましたか。
片山:決断か……結構ありましたが、完全にインディペンデントでの制作だったので、最悪何かあっても、「まあいっか」といった思いもありました(笑)。もし駄作ができたら、どこにも出さずにこじんまりと終わらせてもいいのかなと。その意味では監督を務めるというプレッシャーはそこまでなかったですね。すべてが自分の責任となる覚悟がありました。こうして映画が全国で公開されても何かプレッシャーを受けているわけではないので、そういう性分なのかもしれません。作ることがただ楽しいんだと思います。
(取材・文=石井達也)
■公開情報
『岬の兄妹』
全国順次公開中
出演:松浦祐也、和田光沙、北山雅康、中村祐太郎、岩谷健司、時任亜弓、ナガセケイ、松澤匠、芹澤興人、荒木次元、杉本安生、風祭ゆき
監督・製作・プロデューサー・編集・脚本:片山慎三
配給:プレシディオ
配給協力:イオンエンターテイメント、デジタルSKIPステーション
2018年/シネマスコープ/89分/5.1ch SURROUND SOUND
(c)SHINZO KATAYAMA
公式サイト:misaki-kyoudai.jp