玉城ティナ、『チワワちゃん』は女優としての転換期に? 監督や同世代俳優から吸収した演技スキル
2012年にアイドルやモデル、女優といった多岐にわたるジャンルをカバーするオーディション「ミスiD」のグランプリに輝き、ViViの専属モデルとなった彼女はティーンのカリスマとして注目を集める。それからはドラマや映画でトントン拍子にステップアップし、前述した『わたしにxxしなさい!』でついに初主演。そして昨年末、6年間務めあげたViViから卒業。変わらずにモデルと女優を並行していくことを表明しているわけだが、この明確なキャリアの節目は、新たな演技スキルを開拓するにはふさわしいタイミングと言えるだろう。
とりわけ玉城のようにモデル出身の女優、ないしはモデルと女優を掛け持ちしていく女優というのは近年少なくない。しかしながら動きのある映像の中では、いわゆるフォトジェニックさ以上に表情の柔らかな動きやセリフまわしなどが求められ、漠然とした「演技力」というものを習得するのは決して容易なことではない。もちろんそれは若手女優全般に言えることだが、人気に肖っていきなりメインヒロインという作品をリードする側に回れば、否が応でも粗が目立ってしまうものである。それでも玉城のフィルモグラフィーを振り返ってみ
ると、それをカバーするための段階がきちんと敷かれた作品選びが為されているように見受けられる。
映画デビュー作では海外でも評価の高いSABU監督の『天の茶助』で松山ケンイチの妹役として方言全開でまくし立てるというインパクト重視の役柄を演じ、それからは少女漫画原作映画の『オオカミ少女と黒王子』でヒロインの友人の1人という無難な登竜門を経て、『貞子vs伽椰子』で恐怖演技を習得。そして再び出た少女漫画原作映画の『PとJK』ではヒロインの親友に格上げとなり、それからは立て続けに同世代の俳優たちがしのぎを削る作品で稀有な存在感を発揮。廣木隆一や深川栄洋ら確かな演出力のある監督や、巧い同世代の俳優たちから着実にスキルを吸収していっているわけだ。
そして今年の秋には人気アニメに端を発するメディアミックスの一角である『地獄少女』の実写映画版で主演を務め、さらにアニメ化もされた押見修造の漫画を原作にした『惡の華』でメインヒロインの1人を演じる。必然的に彼女の演技が作品の出来に左右するという大きな責任を背負う立場になるわけだが、それと同時に、これまでの作品でインプットされてきたあらゆるものが試されることにもなる。サポートする側の女優から作品全体を背負って立つ女優として、2019年の玉城ティナはどんな輝きをスクリーンで発してくれるのか、実に楽しみだ。
■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter
■公開情報
『チワワちゃん』
全国公開中
出演:門脇麦、成田凌、寛一郎、玉城ティナ、吉田志織、村上虹郎、仲万美、古川琴音、篠原悠伸、上遠野太洸、松本妃代、松本穂香、成河、栗山千明(友情出演)、浅野忠信
監督・脚本:二宮健
原作:『チワワちゃん』岡崎京子著(KADOKAWA刊)
主題歌:Have a Nice Day!「僕らの時代」 (c)ASOBiZM
挿入歌:Pale Waves「Television Romance」(c)Kobalt Music Publising Ltd (c)2017Dirty Hit
企画:東映ビデオ
企画協力:KADOKAWA
配給:KADOKAWA
制作プロダクション:ギークサイト
製作:「チワワちゃん」製作委員会
2019年/日本/カラー/シネマスコープ/ DCP 5.1ch/104分/R-15
(c)2019『チワワちゃん』製作委員会
公式サイト:chiwawa-movie.jp