玉城ティナ、『チワワちゃん』は女優としての転換期に? 監督や同世代俳優から吸収した演技スキル
一緒に遊びほうけていた友人の本名を、彼女がバラバラ殺人の被害者になったことで初めて知る若者たち。岡崎京子の漫画作品としては『ヘルタースケルター』と『リバーズ・エッジ』につづいて実写映画化された『チワワちゃん』は、現代の東京の若者の暗部をこれでもかとばかりに抉り出す。ただひたすら無軌道なように見えて、ありとあらゆる不安によって雁字搦めにされた“若さ”がきらびやかな映像の中で爆発しており、さながらハーモニー・コリンの『スプリング・ブレイカーズ』の日本版のような気持ちを味わってしまった。
27歳の新鋭監督・二宮健のセンスが遺憾なく発揮されたビジュアルもさることながら、やはり目を引くのはそのキャスティングだ。物語の語り手として仲間たちから“チワワ”との思い出を聞き出していくミキを演じる門脇麦を筆頭にして、成田凌や貫一郎、村上虹郎といった若手屈指の演技派俳優。そして物語の鍵を握る“チワワ”を演じる吉田志織が放つ闇の深い空気感。そんな中で、“チワワ”の親友だったユミを演じた玉城ティナが、出番が少ないながらも印象的な芝居を繰り出していたように思える。
改めて考えてみると、玉城が本作のような役柄を演じているというのはどこか珍しい印象だ。昨年夏に連続ドラマと劇場版が立て続けに制作された『わたしに××しなさい!』の際に、彼女がこれまで映画で演じてきたキャラクターは大きく分けて「優等生タイプ」か「影を帯びたミステリアスなタイプ」のどちらかであると触れたが(参照:玉城ティナ、小関裕太ら期待の若手俳優が勢揃い! 『わたしに××しなさい!』のチャレンジ精神)、本作においてはそのどちらでもない。ストーリー上で起こる状況を俯瞰して見る「優等生タイプ」は門脇麦であり、「ミステリアス」は吉田志織が務めており、玉城は仲間とはしゃぎ、そして仲間の死に誰よりも悲しむ感情的で良くも悪くも“普通”な芝居に徹する。これは玉城が新たな役のタイプを習得する、女優としてのひとつの転換期を迎えたと考えていいのかもしれない。