『なつぞら』広瀬すずの親友役にも抜擢 『3年A組』富田望生、“新たな女優像”築く逸材の登場

朝ドラ、『3年A組』出演の富田望生とは

 ジェンダーロールという言葉はすっかり一般的になっただろうか。ロールというのは「役」のことで、すなわちジェンダーロールとは、「ジェンダー(性別)に押しつけられた役割」を意味する。しかしそうした固定された役割が存在するのは、ジェンダーだけではない。例えば、物語の中で「太っている人」にはお決まりの役回りというものがある。おおらかで楽天的、観客をほっと笑わせるムードメイカー、そして食いしん坊。子どもにも判りやすいキャラクターは、様々な物語に登場し、スマートな主人公の側でドラマを支える。

富田望生

 まだ18歳の新進女優・富田望生は、そうした役回りをとても上手に演じることができる。映画『チアダン』『あさひなぐ』『SUNNY 強い気持ち・強い愛』といった一連の作品の中で、彼女は観客に好感を持たれる主人公の友人役を見事にこなし、ついに朝の連続テレビ小説『なつぞら』(NHK)で広瀬すず演じる主人公の親友役に抜擢された。今年の春は、多くの人が彼女を知り、名前を覚えることになるだろう。

 しかし、それは、富田望生が演じる「ロール」のひとつでしかない。Netflixのオリジナルドラマ『宇宙を駆けるよだか』は、彼女の演技力を一躍世に知らしめた。そこで彼女は、いじめられている太った女の子の肉体、そしてその子と中身が入れ替わる容姿端麗な少女の魂といういわば二役を演じ分けている。それを可能にしたのは富田望生が使い分ける声の演技だ。『宇宙を駆けるよだか』の中で、彼女はとても美しく真っ直ぐな発声で、清原果耶が演じる美少女の挫折や猜疑を知らない純真さ、その魂と身体の入れ替わりを表現している。それは『チア☆ダン』や『あさひなぐ』でコミカルなバイプレイヤーとして演じた時とはまったく別の声、いわば“主演女優”の声だ。富田望生はそういう”ヒロイン”の声を持っている女優なのだ。

 僕は富田望生をこの時代に現れた、まったく新しいタイプの女優だと感じる。

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