『世界でいちばん悲しいオーディション』対談
BiSHモモコグミカンパニー×渡辺淳之介が語る、エンターテインメントの世界で生きていくこと
恐ろしい辛さのデスソースをご飯にかけてほしいと列を作る女の子たち、食べた結果胃に変調をきたして苦しむ女の子たち……。
映画『世界でいちばん悲しいオーディション』は、BiSH、BiS、GANG PARADE、EMPiRE、WAggが所属する事務所WACKの合宿型アイドルオーディションのドキュメンタリー映画だ。監督は、これまでもWACK関連作品の撮影に参加してきた岩淵弘樹。
アイドルになるために、わざわざ1週間もの休みを確保して長崎県の壱岐島へきた女の子たちは、合宿中は24時間カメラに撮影され続けた。彼女たちは、カメラの前で非常によく自分語りをする。まるで自分探しに来たかのように。
オーディションの首謀者であるWACK社長の渡辺淳之介と、デスソースをめぐって唯一、渡辺淳之介に批判的な言動をしたBiSHのモモコグミカンパニー。ふたりに話を聞いた。
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モモコ「合宿に参加したのは正解でした」
――この映画は松竹配給ですけど、「パワハラだ!」とか何かとうるさいご時世によく実現しましたね。
渡辺淳之介(以下、渡辺):でも、映画はお金を払わないと見られないので、一部分だけを観て誤解されて炎上したりしないので、いいフォーマットだと思いますね。モモコグミカンパニーからは苦言があるよね、オーディションにめっちゃ怒ってたじゃん?
――デスソースで女の子たちの胃がやられたときに、モモコグミカンパニーさんが「いまさら渡辺さんが後悔したところで、あの子たちの体が元に戻るわけじゃない」と言うシーンは非常に印象的でした。
モモコグミカンパニー(以下、モモコ):変な正義感がすごく強いんですよ。「許せない、かわいそう」みたいな。
渡辺:かわいそうだよねー。
――自分がやっておいて(笑)。
渡辺:いやでも違うの、俺はあの子たちから「デスソースをかけてくれ」って言われたから。
モモコ;そうなんですよ、「自分が受かりたい」っていう気持ちが強い人ほど「デスソースをかけられたい」と言うじゃないですか。でも、その子たちから体を悪くしてくのがいたたまれなくて。
――そもそも今回、オーディションを壱岐島で行ったのはなぜでしょうか?
渡辺:絶対に逃げられない環境にしたかったのと、僕が勝手に「船に乗って帰っていく少女たちを『バイバーイ!』って言いながら見送りたいな」って思って。
モモコ:ロマンチックですね、なんか(笑)。
渡辺:結局、そんな時間はなくてできなかったんですけど。(モモコに)離島の特別感もあったでしょ? 飛行機で福岡空港まで行って、博多港へ行って、船に乗って、乗り継ぎがうまくいっても東京から3、4時間かかるんですよ。
モモコ:遠かったですね。
渡辺:女の子たちも、すごい気持ちで入ってこれるんじゃないかなと思って。
――モモコグミカンパニーさんは、壱岐島に行くBiSHメンバーに自分が選ばれて、どういう気持ちでしたか?
モモコ:最初はアイナ(・ジ・エンド)が行くことになってたんです。完全に油断してました。だからオーディションに行くって聞いてから、心の準備が2日間ぐらいしかできなかったんです。もう飛び込みでした。
渡辺:もうすごかったですよ。飲み会中にモモコが行くことになったんですけど、モモコが俺に噛みついてきたんですよ。「合宿であんなに人をいじめていいわけない」って。
モモコ:ハシヤスメ(・アツコ)とアイナが行った前回のオーディションのときは、ニコニコ生放送で見てたほうだったんですけど、「かわいそうだな」とか「ひどいな」って思っちゃったんで「また合宿やるのか」みたいな。
渡辺:Twitterでもモモコが「誰も得しない」みたいなこと書いてて、だんだん俺もモモコを行かせたくなっちゃって。
――逆に行かせたくなっちゃった(笑)。
渡辺:うん。アイナは結局頑張っちゃうし、「じゃあこれモモコだな」と思ってね。(モモコに)正解だったね!
モモコ:アイナが行くより絶対良かったとは思います、「私だな」って。
――なぜ自分で正解だったと思います?
モモコ:初期メンバーだけど、そのときけっこうくすぶってた感じが自分の中であったんです。BiSHはレベルが高いと思ってて、「素人からBiSHに入った私はまだ成長できていないな」ってみんなに対して引け目を感じていた部分もあったんです。その部分が、合宿に行って成長できたかなって思います。
渡辺:合宿が終わってからのモモコを見てて、やっぱり成長した感じもあるし、人気もグングン上がってるっていう噂も聞いた。
モモコ:人気が上がったというか、合宿を見てくれた人が私の素の部分を見てくれて、共感してくれる人が増えたって感じかもしれないですね。