中島健人×遠藤憲一の結末はいかに 『ドロ刑』にみるアジアノワールのお約束

『ドロ刑』にみるアジアノワールのお約束

 このドラマは、全10話であるから、その間に、数々の事件も挟み込まれるのだが、この10話を斑目と煙鴉という2人が近づき、そしてまた関係性が変わっていく2時間の映画にしたら、良質なノワールになるだろう(今のドラマでも十分そうであるが)。

 9話で斑目が煙鴉に撃たれたことを、同じ部署で働く先輩刑事の皇子山隆俊(中村倫也)が「てめえ、まだショックなのか、恋人に撃たれたことが」と斑目に指摘するシーンを見て『名もなき野良犬の輪舞』を思い出さずにはいられなかった。斑目がヒョンス(イム・シワン)、煙鴉がジェホ(ソル・ギョング)、イメージは違うが、皇子山がビョン・ガプ(キム・ヒウォン)である。しかも、『名もなき野良犬の輪舞』のポスタービジュアルのように、ヒョンスがジェホに銃口を向けるあの構図のようなシーンもある。『ドロ刑』では、その立場は逆ではあったが。

 このドラマにはコミカルな部分も多い。しかし、だからこそ、2人の関係性の変化が切ないのだ。また、誰もが見られるテレビドラマであるだけに、最終話での斑目と煙鴉が、もしかしたら幸せな結末になる可能性もある。煙鴉は一体何に巻き込まれていて、斑目に何を訴えようとしていて、何を解いてもらいたいのか、最後まで見逃せない。

 日本のドラマは、キャスティングありきで作られることも多く、そのことが必ずしもいい方向に作用するわけではないことも多い。だが、本作はキャストにあわせて鮮やかにキャラクターをあてがきした(と思われる)ことによって、元の物語とは少々違う印象にはなるが、新たな作品として生き生きとしたものになった。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■放送情報
『ドロ刑 -警視庁捜査三課‐』
日本テレビ系にて毎週土曜22:00~22:54放送
出演:中島健人(Sexy Zone)、遠藤憲一、石橋杏奈、中村倫也、江口のりこ、野間口徹、田中道子、生島翔、丸山智己、板尾創路、稲森いずみ
原作:『ドロ刑』福田秀(集英社「週刊ヤングジャンプ」 連載)
脚本:林宏司
音楽:木村秀彬
主題歌:Sexy Zone 「カラクリだらけのテンダネス」(ポニーキャニオン)
演出:大谷太郎、中島悟(AXON)、高橋朋広
制作協力:The icon
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/dorokei/
番組公式Twitter アカウント : @dorokei_ntv

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